市場の状況

スマートフォン市場、特にAppleのiPhoneにおいて、定期的な新製品発表が続いています。毎年新しいバージョンが発売され、製品番号が1つずつ増えていくものの、実際の製品内容にはほとんど変化がない状況が5回、6回と続いています。このような状況下で、消費者はどのような反応を示すのでしょうか。そして、この戦略はAppleにとってどのような意味を持つのか考えてみたいと思います。

期待外れ

iPhoneの新モデルが発表されるたびに、期待は発生します。そろそろ予想外のバージョンが発表されるのではないかという期待です。しかし、実際の改良点が期待値を下回ることが多くなってきています。カメラ性能の向上、プロセッサの小幅な改善など、これらの変更は確かに進歩ではありますが、消費者にとって「今すぐ買い替えなければ」と思わせるほどの魅力的な要素とはなっていません。個人的にも、買い替えニーズは減退しており、今回も新バージョンが発表されましたが今のところ何も行動はしない。買い替えのきっかけにはなりませんでした。

計画的陳腐化

上場企業であるAppleは、株主からの期待に応えるため、毎年の成長を示す必要があります。そのため、計画的陳腐化を通じて買い替え需要を喚起する戦略を取ってきました。新機能の追加や性能向上を少しずつ行い、消費者に定期的な買い替えをうながす手法です。消費者も毎年同じ時期に新バージョンが発表されるので、安心ではあります。買い替え時期を決めることができ、損を感じることが少なくなるからです。

しかし、この戦略には限界があります。消費者が毎年のわずかな変更に慣れてしまうと、新製品への興奮や期待が薄れていきます。結果として、買い替えサイクルが長くなるからです。

反応

頻繁なマイナーチェンジに対する消費者の反応は、次第に冷めていく傾向にあります。今回のiPhoneに関しても「AI搭載」の期待値が高かったのですが、ほとんど触れられていません。おそらく、他社のAIを超えるような内容になっていないのでしょう。予想を超える新機能を発表するために次に持ち越された形だと考えています。

変わり映えのしないマイナーチェンジが続く場合の消費者反応をまとめると下記のような内容になります。

  1. 新製品発表への関心低下
    毎年の発表会が「また同じような内容か」と思われるようになります。さほどチェックもしなくなります
  2. 買い控えの増加
    大幅な改良がない限り、現在使用中のモデルで十分だと考える消費者が増えます。壊れるまで使い続けることになるのです
  3. ブランドロイヤリティの低下
    競合他社の製品に目を向ける消費者が増える可能性があります。アンドロイドスマホに移行する人も出てくるでしょう
  4. 中古市場の活性化
    新製品への関心が薄れる一方で、中古iPhoneの需要が高まる可能性があります。もしくは、1つ前のバージョンを新品で購入する人も出ています。お得感があるのが中古や1つ前のバージョン新品だったりするからです。

まとめ

iPhoneの頻繁なマイナーチェンジは、短期的には売上を維持する効果があるかもしれません。しかし、長期的には消費者の関心を失うリスクがあります。Appleが今後も市場leader地位を維持し続けるためには、消費者を本当に驚かせ、魅了する革新が不可欠。技術革新のペースと消費者の期待のバランスを取ることが、今後のAppleの大きな課題となると考えています。次に期待です。

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