狙わないマーケット

「大量生産はできないが、だからこそ中小メーカーにチャンスがある」とあるメーカーの言葉が出ていました。原材料がさほど取得できず、原材料に限りがあるので、大量に製品をつくることができない。そのため売上も限定される。だから、大手企業は参入してこない、という論理です。このエピソードの中に、ビジネスのポイントはいくつも隠されています。隠れた戦略があるのです。今回はこの戦略の核心に近づき、そのポイントを解説していきます。

見落とす領域

大手企業は、規模が大きいため、売上を狙うときも常に大きな市場を狙います。小さな市場には入ってこないことがあるのです。業界によって参入してこない規模は違いますが、分岐点は必ずあります。何度も経験して来ました。ここからは入ってこない、これ以上だと参入するという境界線があるのです。

この境界線が見えるようになると、小さすぎて大手が参入するメリットを感じない市場を明確にわかるようになります。いわゆるニッチ市場と呼ばれる領域です。中小企業にとって、これらのニッチ市場は対象とすべき場所です。
・規模が限られる(小さい)
・手間がかかる
・時間がかかる
・行くのが大変
・難易度が高い
などの特徴がある領域です。冒頭に取り上げた企業は、たまたま大量生産ができない製品市場でした。それをキーとしてニッチ戦略を立てているのです。

差別化戦略

しかし、単にニッチ市場に参入するだけでは不十分です。その市場でのポジションを確立し、維持するためには、コツがあるのです。その点を知らないと損をします。ニッチに参入してもポジションを占有できないケースがあるのです。ポイントをまとめます。

  1. 独自の技術や知識(オリジナル性、限定性、希少性)
    特定の分野に特化した技術や知識により、他社が簡単にマネできない製品やサービスを提供できます。キーワードはオリジナル性、限定性、希少性です
  2. カスタマイズ能力
    顧客一人ひとりのニーズに合わせた製品やサービスを提供することで、大手企業にはできないきめ細かい対応が可能になります。ようするに、手間がかかるカスタマイズの領域です。採算が合わない可能性もあるので大手が入ってこない領域です
  3. 迅速な意思決定と対応
    機動力を活かし、市場の変化や顧客のフィードバックに素早く対応することで、常に先手を打つことができます。コストや費用がかかることを即決で判断できるとスピード力を活かすことができるでしょう。
  4. パーソナルな顧客関係
    顧客との密接な関係を構築することで、ロイヤルティの高い顧客基盤を作り上げることができます。1対1の関係が構築できること。担当が替わらないこともここではメリットになります

ニッチトップに向けたステップ

では、どのようなプロセスでニッチトップになることができるのでしょうか。簡単な表現であらわすならば、宝探しゲームのようでもありますし、肥沃な土地を見極めることにもなるでしょう。

  1. 市場調査
    ニッチ市場をリサーチするのですが、最初は見つけられないでしょう。時間をかけてでも探すことです
  2. 独自性の確立
    他社と明確に異なる価値提案を開発します。希少性を高めることが優先です
  3. 顧客との対話
    顧客のニーズを深く理解し、製品やサービスに反映させるのですが、ありきたりでは魅力は出せません。顧客が気がつかない課題まで抽出うできるかがカギになるでしょう
  4. 継続的な改善・改良
    市場の変化に合わせて、常に製品やサービスを進化させるのですが、他社より速く、先に改良できる力が試されます

まとめ

マイナス部分、デメリットを強みに変えることが、大手企業が見落とすニッチ市場で成功を収める機会となります。明確な差別化戦略と顧客中心のアプローチを通じて、中小企業は独自のポジションを確立し、持続可能な成長を実現することができると思います。ただ、セオリー通りに進めても、通常はうまくいかないでしょう。差別化できていないからです。希少性を見出すには簡単ではありません。それを探し出せた企業がニッチトップ企業と呼ばれていると思います。

「国産の原料には限りがあるので大量生産はできないが、だからこそ中小メーカーにチャンスがある」。同社を傘下に持つ栄光堂ホールディングス(大垣市)の鈴木伝・代表取締役CEO(最高経営責任者)はそう語る。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH2713M0X20C24A9000000/

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