ポジションが移動してる
住宅市場の製品ポジションが移動しています。振り返ってみれば、材料の高騰から始まり、人件費高騰が重なり、コストプッシュ型のインフレをダイレクトに影響した業界です。現在、大手住宅メーカーの戸建て平均単価は5000万円前後まで上昇しています。戸建てが5000万円となれば、建てられる人も限定されるでしょう。そのため、大手住宅メーカーはポジションを移動させています。他の価格帯の企業もポジション移動をさせられているケースもあり、複雑な状況となっています。
変化
住宅メーカーの歴史を振り返ると、コストパフォーマンスの高い住宅としてデビューしました。安価で品質の高い住宅を提供するポジションだったのです。それが、途中から高価格帯へ移動。その後も高価格帯のポジションをキープしてきました。そのため、大手住宅メーカーのシェア率は思ったほど大きくありません。シェアは拡大していないのです。それが、今回さらに価格が上がったので、『富裕層向け』住宅に特化するようになったのです。現在のところ、ポジション移動は成功しています。
- 住宅メーカー→富裕層向けへ特化
- ローコスト住宅→ローコストのポジションを見失う
- 新しいポジションの創設
では、ローコスト住宅の企業はどうなっているのでしょうか。最安値の住宅を数多く提供してきた企業群です。それが値上がりのため、『ローコスト住宅』という認識から外れました。そのため受注に苦戦しています。存在意義を問われる状況に直面しているといっていいでしょう。値引きをして利益を削って販売しても覆せないところまで来ているように感じています。
市場構造の変化
現在の住宅市場で起きている変化は、単なる価格帯の上昇ではありません。市場構造そのものが変質しています。新築着工数は減り、リフォームが増えているのがその一面を表現しています。もともと諸外国と比較して日本は新築の割合が多かった国です。中古住宅の価格も低く、新築に価値があるような市場だったのです。中古住宅も10数年で建物の価値がほとんどなくなってしまう状況でした。今後は新築が高騰したままになれば、新築数は減少し続け、中古住宅が活性化する可能性が高くなるのです。
戦略への示唆
住宅市場の変化を考えるとき、現在全国で問題になっている『空き家』も解決の糸口が見つかるかもしれません。需要と供給のバランスが崩れるときに空き家も活用される可能性が高くなるからです。ただ、空き家問題は、空き家を相続された方や親族が、『貸したくない』『売りたくない』という感情が強いので、進まない問題もあります。その点も今後は解決されるでしょう。
まとめ
住宅市場で起きている構造変化は、チャンスです。特に新規参入企業やスタートアップ企業にとっては、このチャンスを見逃すことはないでしょう。市場が変わるタイミングは数年に1回もありません。数十年に1回あるかどうかの割合です。ということは、既存企業は変化に追随できない場合は脱落してしまいます。成長する企業と脱落する企業が両方存在するのが市場の構造変化時期に発生する事象だとわかります。
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