航空機整備から
ビジネスにおいて、所有する設備などの性能品質を維持することは大切なポイントです。その中で、航空機産業で用いられる「MRO」という考え方を参考にしたいと思います。他の業界にも応用が可能です。今回は、MROの基本概念とその応用について、具体例を交えながら解説していきます。
MROとは
MROとは
「Maintenance(メンテナンス)」
「Repair(リペア)」
「Overhaul(オーバーホール)」
の頭文字を取った言葉です。もともとは航空機の整備を表す用語です。日本語としても、よく使われる言葉なので理解しやすいと思います。メンテナンスは整備、リペアは修理、オーバーホールは大幅な分解を生じる整備になります。
航空機産業におけるMRO
航空機産業では、安全性が最優先されることから、非常に厳格なMROシステムが確立されています。航空機は飛行した距離に応じて整備をするのではなく、時間の経過とともに整備する基準もあり、厳しいルールにより運用されており、高い品質を維持するようになっています。羽田空港にはエンジンを取り外した航空機が駐機しているのを見ることができます。いったん運行を休止し、大掛かりな整備をしているのがわかります。
1)メンテナンス(Maintenance)
- 日常的な点検作業
- 予防的な保守管理
- 定期的な安全性チェック
2)リペア(Repair)
- 故障部品の修理
- 損傷箇所の修復
- 必要に応じた部品交換
3)オーバーホール(Overhaul)
- 航空機の全面的な分解点検
- エンジンの完全分解と再組み立て
他産業への応用
このMROの考え方は、他の産業に応用可能だと考えています。。以下、主な例で考えてみましょう。
製造業
- Maintenance:生産ラインの日常点検、予防保全活動
- Repair:製造設備の故障修理、部品交換
- Overhaul:製造ライン全体の大規模改修、ライン変更、ライン移設
IT業界
- Maintenance:システムの定期メンテナンス、セキュリティアップデート
- Repair:システムエラーの修正、ハードウェア修理
- Overhaul:システムの大規模更新、プラットフォームの刷新
建設業界(建物管理)
- Maintenance:建物の日常管理、定期清掃
- Repair:設備の修理、小規模補修
- Overhaul:大規模改修工事、リノベーション
自動車業界
- Maintenance:定期点検、消耗品交換
- Repair:故障修理、部品交換
- Overhaul:エンジン分解整備、車体の全面改修
MRO導入のメリット
MROの視点でサービスを組み立てると、サービスの幅が広がります。特にオーバーホールなどの大掛かりなメンテナンスのメニューの追加をすることで単価アップ、売上増につながります。今まで取り組んだことがない場合は、積極的な導入をおすすめします。
まとめ
MROは、単なる保守管理の手法ではなく、製品やサービスの品質を維持・向上させるための包括的なアプローチです。業界を問わず、この考え方を導入することで、サービスメニューの幅が広げられます。同じサービス内容で値上げをすることが難しい場合は、このようなサービスメニューの拡充が有効です。業界にないサービスを導入する場合は、他の業界から参考にするのが有益だと考えています。特に基準が厳しい業界が参考になるでしょう。
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