「イクボス・温かボス」
「イクボス・温かボス(あったかボス)宣言」とは、子育てや介護と仕事の両立を支援する職場づくりを推進する、長野県発の社会的取り組みです。この言葉は、「イク」=育児、「ボス」=上司を意味し、子どもを育てる従業員を支えるリーダーのことを指します。一方、「温かボス」は、人の生活に寄り添い、思いやりのある働き方を実践する上司を意味します。この宣言は、一般社団法人長野県連合婦人会が主導し、県内企業や行政、教育機関、労働団体などが連携して推進。少子化と高齢化が進む中、出産・育児・介護で離職する人が減らない現状を打破し、「ケアの社会化」をめざしています。つまり、家庭の負担を一人の親や介護者に押しつけるのではなく、組織全体で支える社会の実現を目指しています。
なぜ今、「イクボス・温かボス」が必要なのか
日本は少子化が深刻で、労働力が減少しています。また、50代以上の世代で介護離職が増えています。このような状況で、「仕事は仕事、家庭は家庭」という二分法はもはや成り立ちません。イクボス・温かボスの存在は、個人の生活に理解を示し、時間や働き方の柔軟性を認めることで、生産性を高め、離職を防ぎます。育児休暇を取得しやすくし、家族と過ごす時間を大切にできる職場文化が根付くことで、働き手の安心感が生まれ、若者の出産・結婚意欲も高まります。
企業や個人に何ができるか
企業は、育児・介護休業の取得を後押しする制度設計だけでなく、管理職が率先して「子育て休業を取っても大丈夫」と発信すること。また、在宅勤務やフレックスタイムの活用、職場での育児支援の共有会議の実施も効果的です。リーダーが「温かく、かつしっかりした」姿勢を示すことで、組織全体の信頼関係が強化され、「働きたい」と思える職場が実現します。
また、子育て、介護が永遠に続くことは少なく、一時的なものなので、その期間だけ支援する体制や意識が醸成されると働きたい職場となるのでしょう。そのためにも、経営としては、余裕のある経営が求められます。収益的にも余裕がなければ実現しません。ギリギリのところで経営している状態では、このようなことは実現できないと予想されます。
まとめ
「イクボス・温かボス宣言」は、単なる制度の導入ではなく、組織の文化を変える内容です。仕事の両立を支えるリーダーが増えることで、誰もが安心して働ける社会が広がります。一人ひとりが、働き方の多様性を尊重し、思いやりある関係を築くためにも余裕のある経営を実現することだと実感します。
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『経営情報Web Magazsine ファースト・ジャッジ』運営執筆 藤原毅芳(fjコンサルタンツ) from2011