ドイツでベストセラーになった
ドイツで日本の書籍『IKIGAI』が人気を集めています。発売から7年が経ったこの本が、2024年に突如としてベストセラーとなりました。きっかけは、ドイツの刑事ドラマで、「自分にはIKIGAIがなかった」と語るシーンが大きな話題を呼んだのです。この言葉をきっかけに多くのドイツ人が「IKIGAI」とは何かを知りたいと本を手に取り、ベストセラーの座を獲得しました。15週間連続1位にランクイン。ブームとなったそうです。英語版が発売されてから7年後にヒットしたのは意外。普通は時間経過後にヒットすることは稀です。ドイツの人にとっては「新しい概念」であり、「新しい意味づけ」に見えたのでしょう。ここ、ポイントです。
なぜ「生きがい」に惹かれるのか
ドイツ人が「生きがい」に深く共感する背景には、現代社会の価値観の変化があると予想できます。これまで、ドイツを含む西洋社会では、物質的な豊かさやキャリアの成功こそが幸福の指標とされてきました。目標達成型です。しかし、過度な競争やストレスにさらされ、多くの人々がそうした生き方に限界を感じ始めています。全員が理想の目標を手にできるわけではないからです。
「生きがい」は、仕事や収入だけでなく、日々のささやかな喜び、趣味、人とのつながり、社会貢献など、多角的な視点から人生の価値を見出すことを教えてくれます。この考え方が人々の心に深く響いたのでしょう。ひとつの価値だけを見出すのではなく、自分の心を豊かにする複数の価値基準を持つこと。生きがい、というキーワードによって教えられたのではないでしょうか。
まとめ
ドイツでベストセラーとなった「IKIGAI」ブームは、単なるトレンドではないと考えています。ひとつの目標を追求する従来の価値観に疑問を抱き始めた社会が、新たな指針を求めていた証拠です。「生きがい」という哲学は、複数の視点をもたらしてくれるのでしょう。人の心に急に響くとき、何かが欠けていた状態だと考えられます。虚無感であったり、目標を見失った状態です。そこに、「新しい意味づけ」を提案してくれるコンテンツには反射的に反応してしまうと思います。日本でも形は違いますが、同じようなことが発生しています。この動きは時代の流れですね。
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