新しいフェーズ
2025年11月、日本の債券市場が不安定な状況になっています。 ニュースをご覧になった方もいると思いますが、国債の利回りが急上昇(価格は下落)しています。特に注目すべきは、海外の債券トレーダーたちが、明確な意図を持って「日本国債売り」の準備をしていることです。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-20/T61SH7KK3NYA00
債券トレーダーたちは、売りを浴びせる準備をしているとのこと。そうなると、これは単なる市場の調整ではありません。「売りを浴びせるトレーダー」と「撤退戦を強いられる日銀」の間で起きている、新しいフェーズの戦いといえるのではないでしょうか。
どうなるのか
過去にも何度か似たような状況がありました。黒田元総裁のときは日銀が勝ちました。債券トレーダーの売りに勝ったことがあります。今回はどうなるのでしょうか。このニュースの裏側で起きているメカニズムと、なぜこれが企業経営にとって無視できないリスクなのかを解説してみます。
- 戦いのルールが変わった
かつて、日本国債を売り崩そうとする海外ヘッジファンドは、日銀の強力な買い支え(異次元緩和)の前に敗れ去るのが常でした。
しかし、2025年現在、戦いのルールは根本的に変わっています。かつての日銀は
・「金利が上がるなら、無制限に国債を買う(指値オペ)」
という最強の盾を持っていました。でも今はちがいます。今の日銀は、
・金融正常化に向けて「国債の買い入れを減らしていく(量的引き締め)」フェーズ
に入っているからです。つまり、盾を置いて、戦場から徐々に撤退しようとしている時期なのです。
方向転換するのか
この「日銀という最大の買い手」がいなくなろうとしているタイミングで、政府(現政権)が何をしようとしているのか。それが今回の市場変動のトリガーになっています。
- 「売り手」に燃料を投下した17兆円
日銀が買い支えをやめようとしているその背後で、政府は17兆7000億円規模という、市場予想を遥かに上回る補正予算(=国債の増発)を打ち出しました。(減税を含めると20兆円を超える)
株価(国債価格)が暴落するのは、需給の理屈として当然。 海外勢はこの矛盾を見逃しません。「需給が崩れるなら売れば儲かる」と、冷徹にショート(空売り)ポジションを構築し始めているのです。
- 新たな標的は「5年〜10年債」
今回の特徴は、これまで安定していた「5年から10年」の中期ゾーンの国債を売る準備をしていること。
政府は超長期債の発行を減らし、期間の短い債券での調達を優先しています。国債を売り切るためにそうしました。結果、このゾーンの供給過多が懸念され、海外の有力プレイヤーがここを狙い撃ちし始めているのが今回の特徴です。国債の5〜10年という期間は、多くの企業融資や住宅ローンの基準となる重要な金利。ここの金利上昇は、実体経済へのダメージに直結します。
まとめ
金利上昇を止めるために介入すれば、円安が加速しインフレが悪化。介入しなければ、金利急騰で企業の資金調達や国の利払い費がパンク。選択肢がない状態になっているのがわかります。まさに「あちらを立てればこちらが立たず」の状況。今回の戦いにまた日銀が勝つことができればいいのですが。負ければ、国債の金利は急上昇になっていきます。インフレも加速するでしょう。そうなれば、物価の上昇も10%超になることも予想しなければなりません。
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