「縁の下の力持ち」O&Mとは
毎日使うクルマ、スマートフォン、そして着ている服。これらはすべて「工場」で作られています。工場で製品を作り続けるためには、巨大な機械やシステムが常に稼働することが欠かせません。この「機械の維持管理」は大切な要素。その市場のことをO&M(オペレーションとメンテナンス)と呼んでいます。
- O (オペレーション/Operation):設備を動かす(運転する、稼働させる、監視する)
- M (メンテナンス/Maintenance):設備を守る(点検、修理、部品交換する)
製造業にとってO&Mは、野球でいう「守備」のようなもの。地味に見えても、製品を途切れさせず、安定して工場を動かし続けるための重要領域といえるでしょう。
O&M市場への注目
O&Mは昔からありましたが、その市場(O&Mを請け負うサービス)が成長し、IT企業まで参入するほど注目されています。その背景には、日本の製造現場が直面している2つの大きな課題があります。
1. 設備「老朽化」問題
高度経済成長期に建てられた工場やプラントの設備が、築40年、50年を迎えようとしています。人間と同じで、機械も古くなると故障しやすくなります。大きな事故やラインの停止を防ぐためには、今まで以上に専門的な診断と大規模な修理・延命策が必要になり、O&Mサービスへのニーズが増加しています。
2. 熟練技術者「引退」問題
これまでO&Mを支えてきた「設備のことは何でも知っているベテラン技術者」が、定年退職を迎えています。機械の「音を聞いただけで故障がわかる」ような職人技やノウハウが失われつつあり、工場側だけでは設備の面倒を完璧にできない可能性が出てきているのです。最近、工場の不具合が多くなったように感じているのはそのせいではないでしょうか。
「壊れてから直す」時代はもう終わり
O&Mは、従来の「壊れてから直す」というやり方から、「壊れる前に手を打つ」やり方へ変化しています。そこが進化です。不具合の少ない機械や装置を導入することも大事ですが、老朽化は避けることができません。劣化するところを事前に察知できれば予防で防ぐことができるのです。
- 事後保全(放置)
故障したら慌てて修理する。→ 突然工場が止まるリスク大 - 予防保全(定期健診)
決まった期間で部品を交換する。→ まだ使える部品も捨ててしまうため、コストがかかる可能性がある
O&M市場の今後
製造業のO&M市場は、今後もデジタル技術によってさらに発展していきます。IoTが出たときに言われていたセンサー数の急増により、人が見ていなくても監視できる体制は増えています。また、そこにAIが追加されれば予知の精度も上がっていくでしょう。
まとめ
製造業のO&Mは、単なる「守り」ではなく、工場の収益性と生産性を高めるための「攻め」の経営戦略として、今後ますます取り上げられます。設備や装置は長く使えば使うほど利益をもたらします。また、製造コストも減少していきます。コスト競争は今後も激しくなるばかりなので、原価低減のひとつとしてO&M市場が注目されてもおかしくありません。
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