7割が「増やさない」

賃上げが進みました。2026年春の賃上げも大企業は早々に発表しています。なので、手取りは増えているはずです。それなのに、消費は低迷したまま。2025年年末から、さらに消費が下がっているのでは、と言われ始めました。

約1万1,000人を対象に行った調査によると、賃上げや減税で手取りが増えても
・「消費を増やさない」
と答えた人が全体の
・73%
に達しました。しかもこの傾向は特定の年代に限った話ではなく、
・18歳から69歳
まで、すべての年代でほぼ同じ割合だったのです。ちょっと驚き。
総務省の家計調査でも、可処分所得はコロナ前から増加傾向にあるにもかかわらず、消費支出は回復していません。

手取りが増えれば消費が増え、景気が回る。経済学の教科書ではそう説明されます。しかし、現実はそうなっていない。ここが今後の課題。

消費を止めているのは「漠然とした不安」か

なぜ手取りが増えても消費に回らないのか。調査によると、最大の理由は「漠然とした不安があるから」です。37.5%がこの理由を挙げており、年齢が上がるほどその割合は高まり、60代では44.7%に達します。具体的に何が不安なのかを掘り下げると、トップは「老後資金」、次いで「インフレ」「収入の減少」と続きます。

注目すべきは「漠然とした」という部分です。具体的にいくら足りないかを把握しているのではなく、なんとなく不安だから使わない。実際、公的年金の水準を知っている人は50代でさえ半数に満たず、退職金や企業年金の水準を知らない人は60%以上にのぼります。つまり、不安の正体がわからないまま、とにかく貯めておこうとしている。この心理が消費を抑え込んでいるのです。経営者としてこの構造を理解しておくことは、社員の処遇を考えるうえでも、自社の顧客心理を読むうえでも重要です。

「貯める」のではなく「増やす」へ

もうひとつ興味深いのは、若年層の動き。18〜29歳では、消費を増やさない理由として
・「漠然とした不安」
に次いで
・「資産形成に活用するから」
が高い割合を占めています。さらに、金融リテラシーが高い人ほど、手取り増を資産形成に回す意向が強い。毎月2桁万円を投資に回す人の話も聞いたことがあります。かなりのリテラシーを持っている方ほど、たしかにその傾向が強い。

まとめ

あくまでも調査結果の傾向ですが、そこからわかることもあります。不安が消費より貯蓄に意識を向けますが、貯蓄金額がいくらになったら不安が消えるのでしょうか。そこも心理です。実は金額が大きくなっても不安が消えない人は消えないのです。今度は、「減るんじゃないか」という新たな不安も出てきます。心理は複雑です。

「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)より
三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所
https://mirai.smtb.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/miraiken_report_2601_1.pdf

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