他社がやらなかったこと
小売業界で圧倒的な成功を収めたウォルマートの創業者、サム・ウォルトン氏の言葉に、小売業の本質が隠されています。その中で記憶に残るのが次の内容。競合他社が実行しなかった3つの要素です。具体的には、下記3点を他社は実行しなかったのです。
1)「店舗を回ること」
2)「物流センターを作ること」
3)「コンピュータ投資」
です。
ウォルマートはこの3点を行うことで優位性を築いてきたわけです。おもしろいのは、デジタルに偏るわけではなく、アナログもバランスよく実行していることです。このバランス感覚が他者より先行した理由だと感じています。
3点を具体的に見ると
3点について考えていきます。まず、「店舗を回ること」にこだわっている理由です。小売業は、お客様との直接の接点である店舗が生命線です。店舗の状況を肌で感じ、現場の声に耳を傾けることで、ニーズを把握し、適切な対応を取ることができます。サム・ウォルトン氏は、現場に答えがあると言っています。週に4日は回っていたそうです。そこで、顧客だけでなく、スタッフとも触れ合うことを優先させていたのがわかります。机上の空論ではなく、実際の店舗運営から分かることこそが、解決への近道なのがわかります。
物流とDB
次に、「物流センターを作ること」と「コンピュータ(DB)投資」について。ウォルマートは、自前の物流センターを保有し、効率的な商品供給体制を構築しました。これにより、店舗に商品を迅速かつ安価に届けることが可能になり、競争力を高めることができています。店舗運営費に関して他者より10%低い数字を達成したのは、こうした取り組みの結果です。コストが10%違うと他者は追いつくことができません。長年の蓄積が差となって出てきた領域だと思います。
また、早くからコンピュータ技術に投資し、データセンターを自社運営することで、在庫管理や業務の効率化を実現しました。これらについては15年以上前から注目していました。巨大なデータベースを構築し、運用していたことに当時から先に行っている企業だと認識していた次第です。
バランスよく
小売業はシステムだけでは成り立ちません。接客は人が行うものであり、店舗運営の質を左右するのは、現場で働く従業員の力です。だからこそ、サム・ウォルトン氏は、店舗周りを止めてはいけないと言っていたのです。現場とのコミュニケーションを大切にし、従業員のモチベーションを高め、最終的にお客様満足度を上げていくプロセスを考えていたのではないでしょうか。
まとめ
ウォルマートの差別化ポイントは、物流センターとコンピュータ技術への投資にあります。これらは、小売業の裏側を支える重要な要素ですが、表舞台では、店舗運営と接客の質が問われます。サム・ウォルトン氏の言葉は、小売業の本質を突いており、現代においても色褪せることのない教訓を与えてくれます。小売業の成功には、現場重視とシステム投資のバランスが不可欠ということ。アナログとデジタルのバランスのようにも見えてきます。両面を欠かすことなく取り入れる時期はまだ続いています。
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