実態
「自爆営業」という言葉が出てきました。SNSでも少し話題になっているようです。この言葉を聞いてピンとくる人はいるでしょう。営業経験者は響くものがあるのではないでしょうか。目標達成、ノルマ達成のためにスタッフが自腹で商品を購入する慣行は、長年見過ごされてきました。今回厚生労働省がこの問題をパワーハラスメントとして指針に明記する方針を示したのです。
自爆営業の歴史と現状
かつては、あらゆる業界のセールス、小売店スタッフなどの業界で見られた自爆営業。最近ではSNSの普及により問題が可視化されやすくなり、露骨な強要は減少傾向にありました。ただ、下記のような状況は続いていたようです。
- 明確なノルマは課さないが、成績評価や昇進に強く影響する
- 「自主的な判断」という形を取らせる
- 周囲からの暗黙の圧力
象徴的な事例
自爆営業の代表的な例として、年末になるとある企業を思い浮かべます。販売ノルマがあるのでしょう。スタッフが自腹購入を余儀なくされるケースや、家族・知人への無理な購入依頼があったと報告がされているのをSNSで見たことがあります。
金券ショップが映し出す実態
自爆営業の実態を映し出すのが、金券ショップの商品構成。ここにその実態が表出されていると思います。年末に売り出され、年始に利用する製品は、この時期になると金券ショップに数多く並びます。働いているエリアで売却するのが嫌な人は遠くの金券ショップで売却をしているようです。金券ショップに売却しても損をしているのは事実で、損の幅を小さくするための手段になっています。
新古品市場を見ても
金券ショップと並んで、自爆営業の末は新古品市場へ流れるケース。新品や新古品が大量に流通している背景には、販売員の自腹購入が隠れている可能性が高いと想像してしまうこともあります。それだけではないと思いますが、背景を想像してしまいます。
問題の本質
自爆営業が継続する背景には、やはり見えない圧力があるのでしょう。
- 業績至上主義の企業文化
- 中間管理職による旧来手法の踏襲
- 短期的な数字への過度な執着
- リーダーが相談にのってくれないチーム
失敗が許されない文化の企業はその傾向が強いと感じています。相談ができない組織もその傾向があるでしょう。ひとりで抱えてしまい、最後には最終手段に出てしまうのです。
おわりに
厚労省による自爆営業のパワハラ指針への明記は、問題解決の一歩です。しかし、真の解決には法的整備だけでなく、企業文化そのものの変革が必要になります。コンプライアンスを前提としながら、健全なビジネスで業績を出すようにしなければなりません。企業規模が大きいほど、この変化に対応できない可能性が高いので、早急な手を打つ必要があります。
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