3つの深度

理解の3つの深度、表層階層・抽象階層・原理階層について取り上げます。これらは、目に見える事象からその背後にある本質的な法則まで、思考を深めていくためのフレームワークです。覚えておくといいでしょう。

1. 表層階層

これは、日常的に直接観察したり体験したりする、最も分かりやすい階層。問題や事象が「何が起きているか」という形で認識されます。

  • 具体例:
    • ある商品の売上が落ちている
    • ウェブサイトの離脱率が高い、アクセスが減っている
    • 社内で特定部門の残業が常態化している

この階層での対策は、応急処置的・対症療法的になりがちです。たとえば、「売上が落ちているから広告量を増やす」といった判断がこれにあたります。

2. 抽象階層

表層で見える現象が「なぜ起きているのか」を考え、その背景にあるメカニズムや構造を捉える階層です。事象同士の因果関係やパターンを分析し、モデル化・一般化して考えます。

  • 具体例:
    • 売上低下の背景:
      競合他社が新商品を投入し、市場シェアを奪っている(競合との関係性)
      顧客のニーズが変化し、既存の商品がマッチしなくなった(市場構造の変化)
    • 離脱率の背景:
      サイトのデザインが古く、スマートフォンで見づらい(使いやすさの構造的問題)
    • 残業の背景:
      業務プロセスに無駄が多く、特定の担当者に仕事が集中している(業務フローの構造問題)

この階層で考えることで、問題の根本的な原因に近づき、より効果的な解決策を見出すことができます。

3. 原理階層

すべての根底にある、普遍的な法則や本質のレベル抽象階層でとらえた構造や仕組みが、どのような根本的な原理や原則に基づいているのかを理解する最も深い階層。「そもそも、それは何を意味するのか」を問い詰めることで法則へと到達します。

  • 具体例:
    • 市場や競争の本質:
      顧客は商品そのものではなく、商品を通じて得られる価値(ベネフィット)を購入している(顧客価値の原理)
      市場における競争とは、顧客の限られた可処分所得と時間を奪い合うことである(競争の原理)
    • 使いやすさの本質:
      人間は認知的負荷が少ない状態を好み、直感的に理解できないものを避ける傾向がある(人間中心設計の原理)
    • 組織の本質:
      組織の生産性は、個人の能力の総和ではなく、仕組みや協力体制によって決まる(システム思考の原理)

この原理階層まで掘り下げて物事を理解できると、表面的な事象が変わっても応用が効く、普遍的で強力な思考の軸を持つことができます。戦略立案やイノベーションの創出は、この階層での深い洞察から生まれることが多くあります。

まとめ

ビジネスや学習など、あらゆる場面において、目に見える「表層」だけでなく、その背後にある「抽象」→「原理」「法則」へと思考を深めていくことが、本質的な理解につながり解決に導いてくれます。何度も問いを立てて、身につけてしまいましょう。

階層捉えるもの問い特徴
表層階層目に見える現象・事象 (何が起きているか)具体的で分かりやすいが、場当たり的な対応になりがち
抽象階層背後にある構造・仕組みなぜ起きているか応用可能な解決策につながる。問題の根本原因に迫る
原理階層根底にある法則・本質そもそも何か普遍的で応用範囲が広い。思考の根幹となる

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