異例のこと

半導体製造メーカーのラピダス。国も積極的、かつ異例の支援をしています。経済産業省の担当も引き続きラピダスを担当しているのも異例のこと。担当者が変わらないことがニュースにもなるくらいです。それだけ失敗できない事業になりつつあります。

失敗できないラピダス支援、経産省の担当局長が異例の在任5年目に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA24A250U5A920C2000000/

半導体製造の裏で進むプランB

次世代半導体の国産化を目指し、期待を背負う新会社「ラピダス」は、回路線幅2ナノメートルという半導体の製造にチャレンジしています。最初から2ナノの製造は無理、という意見もあるくらい高いハードルにチャレンジしています。通常なら、10ナノから段々と小さい半導体の製造にしていくプロセスになるのです。一気に世界記録を狙っている感じなのでしょう。

この壮大な計画は、失敗するわけにはいきません。製造メーカーとして収益を成り立たせる必要があります。2ナノの半導体製造に成功すること、そしてその半導体を購入してくれる顧客を見つけること。両方ともハードルが高いと感じます。

そんな中、もう一つの戦略「プランB」が動き出していると報道されました。このことは、まだあまり知られていないのかもしれません。それは、ラピダスを単なる「製造工場」に留めず、「研究開発拠点」へと昇華させる構想。どのような内容なのでしょうか。

脇役を主役にする

「プランB」とは具体的に何か。その核心は、ラピダスを「最先端材料の研究開発拠点」として活用することです。半導体の製造には、シリコンウエハーやフォトレジスト、特殊ガスといった高性能な材料が不可欠。日本は、半導体そのものの世界シェアは落としたものの、これらの材料や製造装置の分野では世界トップクラスの技術力とシェアを誇る企業が数多く存在します。

プランBでは、こうした日本の材料メーカーが開発した最新の素材を、ラピダスの製造ラインで実際にテストし、性能を評価する場を提供するというものです。半導体製造メーカーの顧客に提供する前に、実際の2ナノ製造ラインで実験できることは素材メーカーにとっては大きなメリットなのです。これにより、材料開発のスピードと精度を向上させ、日本の素材メーカー企業の競争力をさらに高めることができるのです。

まとめ

ここから、ラピダスの挑戦は、単に最先端の半導体を作るという「点の目標」だけを目指しているのではないことがわかります。日本の強みである材料・素材・装置メーカーを巻き込み、研究開発から製造までが一気通貫した「半導体エコシステム」を国内に再構築するという、壮大な「面の目標」を掲げているのではないでしょうか。プランAの可否に影響されず、プランBで安定した収益を得ることは有効な戦略だと感じました。経営の継続性は高まると思います。

——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆