なぜあなたのチームは前に進めないの
「A部署とB部署の意見が対立している。どちらの言い分も分かる。なんとか両者が納得する形で、丸く収めたい…」
若手のリーダーが、このような場面に直面していたとします。両部署の調整をしなければなりません。どうすればいいのか。解決の方法として、時間をかけて解決するプロセスがあります。しかし、あいまいな状態が続くので、かえってマイナスな状況に陥ることもあるのです。リーダーがはっきりしないように見えてしまう。リーダーの中では、両部署がともに納得する形を模索しているのだが、「何もはっきりさせない」リーダーに見えてしまうこともあるようです。
双方の意見を尊重し、和を大切に思うその姿勢は、リーダーとして非常に尊いもの。しかし、その「双方納得」を目指す優しさが、実は信頼を失う「罠」になっているとしたらどうだろうか。
若手リーダーが陥りがちな「決められない」問題の深層心理と、その罠から抜け出し、組織を力強く前進させるための具体的な方法について解説したいと思います。
なぜ「決められない」リーダーになってしまうのか?
良かれと思って取っている行動が、なぜ問題の先送りを生んでしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの心理的なハードルが存在していると考えています。
裏側は
このような双方合意を考えながら意思表示をはっきりさせないリーダーにはいくつかのタイプがあると思います。たとえば、次のようなタイプです。
- 「良い人」でいたい症候群
リーダーである前に、人間として「メンバーから嫌われたくない」「敵を作りたくない」と思うのは自然な感情。特にリーダーになったばかりの時期は、その傾向が強くなります。
決断を下すことは、誰かの意見を退けること。自分が「悪者」や「冷たい人間」だと思われることへの恐怖が、明確な態度表明を鈍らせてしまうことがあるのです - 「公平性」の履き違え
「公平」とは、「両者に平等に配慮し、全員を満足させること」だと思い込んでいるケース。これは、リーダーシップにおける「公平性」の大きな誤解
ビジネスにおける真の公平性とは、組織が掲げる「目的」や「方針」に対して公正であること。私情や個人の声の大きさではなく、目的に照らして最も合理的で効果的な判断を下すことこそが、リーダーに求められる公平な姿勢だと考えています。全体最適の視点です。
決めないことのマイナス
問題を先送りにしてしまうと、その場は丸く収まったように見えるかもしれません。しかし、水面下では組織にとって深刻な事態が進行してしまうことがあります。最悪のケースは爆発してしまいおさまらないこともあるのです。
- 1:全員からの信頼喪失
最も皮肉な結果です。「両方に良い顔をしよう」とした結果、対立していた両当事者から「このリーダーは頼りにならない」という烙印を押されます。チームメンバーは、重要な問題をこのリーダーに相談することをやめてしまうでしょう - 2:問題の深刻化
放置された対立の火種は、時間と共に消えることはありません。むしろ、人間関係の溝は深まり、業務の連携は滞り、さらに大きな問題へと発展してしまいます - 3:チームの崩壊
不透明な状況は、メンバーにとって大きなストレスです。特に、成果への意識が高い優秀な人材ほど、「物事が決まらず、前に進めない組織」に愛想を尽かし、静かにチームを去っていきます。離脱者が増えたり、一気に離脱するケースも見たことがあります。
まとめ
リーダーの判断をメンバーが待っているときに、あいまいにしてしまうと問題は解決されないだけでなく、逆に問題が大きくなることがあります。問題先送りの結果です。双方の意見を調整し、まとめあげるために、リーダーの意思表示は必要です。判断がつかないときは、細かく時系列に問題を振り返りながら、部分的に意思を表明することです。各論では、どちらが正しいのか。総論では何が理想なのか。その点を調整できるといいでしょう。
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