頼れるリーダー
「その人の言うことなら間違いない」
「過去の成功の数々が、その判断の正しさを証明している」
そんな人がチームにいませんか。経験豊富のリーダーであり、実績があるリーダーです。頼れるリーダーでもあります。しかし、人間に完璧な人はいません。絶対的な信頼が、「大惨事」の引き金になることもあるのです。これは事例が証明していることであり、そんなリスクが潜んでいることを教訓として知っておきたいところです。
沈黙するチーム
一見、最強に見える「経験豊富なリーダー」と「素直なチーム」の組み合わせ。実はこの構図こそ、組織が陥る危険なワナなのです。メンバーがリーダーに異を唱えられない。その沈黙が、やがて取り返しのつかない失敗を生み出します。今回は、そのメカニズムを、事例からの教訓とともに解き明かしていきます。
「忖度」と「思考停止」
過去に発生した大惨事の飛行機事故において、絶対的な機長に対して副機長が何も言えなかったことがあります。着陸時に失速するまでスピードが低下していたのにも関わらず、副機長は何も言わなかった。機長は自信家なので、そんなことが発生しているとは思わなかった。結果、着陸時に失速→墜落してしまった事例です。副機長も優秀な方のはず。しかし、意見を言わせない空気が大惨事を引き起こしているのです。
心理作用
なぜ、優秀なメンバーが、間違った決定に「NO」と言えなくなってしまうのでしょうか。その背景には、リーダー側、メンバー側双方に働く強力な心理作用があります。
- リーダー側の要因
成功体験への過信→過去の成功体験が多ければ多いほど、リーダーは「自分のやり方が最も正しい」と無意識に信じ込み、自分と異なる意見を軽視・排除しがちになります - メンバー側の要因
権威への服従と恐怖→「あのリーダーが言うのだから正しいだろう」という思考停止。そして「反対意見を言って関係を悪化させたくない」「評価を下げられたくない」という恐怖。これらがメンバーの口を固く閉ざさせ、組織全体が集団浅慮(グループシンク)に陥るのです
この状態では、リーダーにとって耳の痛い「悪い情報」は上がってこなくなります。現場が感じているリスクや懸念は無視され、意思決定の質は著しく低下。全員が間違った方向に突き進んでいることに、誰も気づかないまま破局を迎えてしまうのです。
CRM
このような事故の反省から、航空業界はCRM(クルー・リソース・マネジメント)という安全管理概念の仕組みを導入しました。これは、「利用可能な全てのリソース(人的資源や情報など)を有効活用する」考え方で成り立っています。具体的には、コックピット内コミュニケーションやリーダーシップ、意思決定に定義されています。今は、航空界だけでなく、ヒューマンエラーが安全に大きく関わる医療、海運、原子力発電などの分野にもCRMの考え方が広がっているのです。
まとめ
過去の経験を活かすことは大事なことですが、過信すると失敗を招きます。常に「自分はまだ発展途中」であることを認識したいです。人から自分のことについて意見を言われたくない、と思い始めたら、それは過信のサインかもしれません。気をつけたい部分です。
——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆