資金繰り課題
「サプライチェーン金融(SCF)」という言葉をご存知でしょうか。企業にとって、仕入れから販売までの間の「資金繰り」は永遠の課題。特に、大企業に部品を納める中小企業(サプライヤー)は、納品してから実際に入金されるまでの期間が長く、キャッシュフローに苦しむことが少なくありません。
この問題を解決する仕組みのひとつに、サプライチェーン金融(SCF)があります。今回は、サプライチェーン金融の仕組みから、なぜ「リバースファクタリング」と呼ばれるのか、そしてSCFのリスクまで取り上げてみます。
資金繰り解決法のひとつSCFとは
サプライチェーン金融(SCF)とは、
・買掛金を金融機関に立て替えてもらう
金融サービスです。支払いの先延ばしがサプライチェーン金融になります。
売掛金の場合は、ファクタリングと呼んでおり、売掛債権をファクタリング会社(金融機関など)に売却し、現金化することです。そのため、サプライチェーン金融は「リバースファクタリング」と呼ばれることもあります。
問題点
サプライチェーン金融に関しては、課題があります。買掛金の支払いを先延ばしにすることは通常の借入と同じような仕組みなのですが、バランスシートB/Sに借入金として計上しなくてもよいルールになっているのです。そのため、会計上の不透明さの原因になっているのです。
最近でも米国のファースト・ブランズ社が破産法の適用を申請しましたが、負債総額が確定していません。サプライチェーン金融やファクタリングの不正(ひとつの売掛債権を何度も売却していた)があり、どこまで負債総額が大きくなるのかまだはっきりしていません。
資金繰りは良くなるが
ファクタリングやサプライチェーン金融は普通の金融取引なので、問題はありません。しかし、それが赤字隠しに用いられるようになると経営の実態が見えにくくなります。キャッシュフローは回っているのですが、単なる先送りになっている状態になっていることもあるからです。もともと決算書類は経営の状態を正しく表現するために発明されています。その目的とは違う方向に利用すると、逆に会計が見えにくくなってしまうでしょう。
会計からわかる状態
売上が増加しているときに売掛金も増えている場合は、販売後の資金回収ができていない可能性があります。長期売掛が増加している場合は資金回収できていないことも考えられます。
買掛金も異常な増加をしている場合は、支払いの先送りをしているだけなので形を変えた借入増加と同じ扱いになります。借入が増えているということは、赤字が続いている可能性があります。このように、売掛金や買掛金が見えている状態なら推測ができるのです。
まとめ
B/Sに借入として計上しない会計の不透明性が指摘されるサプライチェーン金融について取り上げました。通常の金融取引なので利用しても問題はありません。しかし、会計の実態を意図的に隠すために用いると弊害が出ることは知っておくべきでしょう。
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