電力の融通とは

現在、電力会社は発電した電気をほとんど蓄電していません。そのため予想消費電力量に応じて発電していますが、余分に発電した電気は蓄電されていないのです。そのため不足が生じないように多めに発電をしなければなりません。

蓄電しない理由はコストが高いから。電気を蓄電するには電池が必要ですが安くはありません。蓄電できる量とコストが釣り合わないのです。もし、蓄電が可能であるならば発電量は予想消費量と同じだけでいいはず。急に不足が生じても蓄電から供給できるからです。

夏になると水不足が報道されることがありますが、最近は電力不足が報道されるようになりました。電力が逼迫しています!節電しましょう、と言われるようになっているのを見ると、変化を感じます。

仮想発電所とは

そんな節電意識が高い時期になると新しい取り組みが提案されます。電気の世界では『仮想発電所』が提唱され始めています。仮想発電所のための家庭用蓄電池も販売されていますし、メディアにも取り上げられています。

各家庭の太陽光ソーラーで発電し、各家庭で蓄電する。各家庭の発電量、蓄電量を常時把握しながら電源の供給ルートを決めていくのが仮想発電所の仕組み。不足が生じれば、各家庭で蓄電してある電気を供給することが可能なのです。

沖縄の宮古島では、仮想発電所が稼働しています。110万円ほどする蓄電池も300個以上設置されており、実証実験をしているような形ですが実際に運用されています。(企業が蓄電池を購入し各家庭に無償で設置)

蓄電池メーカーに異業種から

家庭用蓄電池は、電池メーカーが販売をしていますが、ユニークなところでは電気自動車メーカーの米国テスラ社が販売をしています。テスラ社はパナソニックから電池を提供されていますが、自社開発もしています。乾電池型の充電式電池を製造していますが、製造ラインの機械は食品メーカー用の機械を流用しており、製造プロセスにも独自性を感じます。おそらく、コストを下げることを命題とされているので食品製造機械を流用したのではないかと想像しています。

テスラ社が蓄電池の販売をするのであれば、日本のトヨタ、日産も家庭用の蓄電池販売をビジネスにしてもおかしくはありません。ただ、その流れは今のところ見えてこないのが寂しいところです。

テスラ、日本で「仮想発電所」:日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63812360W2A820C2TB0000/

まとめ

家庭用蓄電池の普及は電気自動車の普及と同じように安価な価格帯の商品が発売されると一気に開花します。それまでは、アーリーアダプター層が購入するだけなので全体の2割を超えることはないと思います。2割を超えるとティッピングポイントを乗り越えていくので、普及が加速する。それまでは、時間がかかるのではないでしょうか。しかし、電力料金の値上げが数年間続くのであれば、蓄電池への関心が一気に高まり普及の後押しをすることも考えられます。そのためか、蓄電池の販売している企業を見るとスタートアップ企業や新規事業として異業界から参入しているケースも見受けられます。今後も注目すべき領域だと感じます。

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ビジネスリーダーのためのWeb Magazine ファースト・ジャッジ:4,975投稿目 fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆