予想とは逆の動き

日本銀行(日銀)は、経済の状況を鑑み、長期金利の上昇を容認するという重要な方針変更を行いました。イールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化です。その結果、長期金利は0.5%から0.6%へと上昇しました。通常、このような金利上昇は、外貨と円の交換価値に影響を与え、通常の動きなら為替が円高が進行すると考えられます。

しかし、今回の市場反応は異例で、逆の動きを見せています。急激な円安が進行しており、一部の経済評論家や投資家からは、日銀の施策が失敗したかのような動きだとの声が聞かれています。失敗という表現は強いかもしれませんが、市場のプレイヤーの中には「おかしいな」と感じている人もいるのかもしれません。こんな記事も出ていました。

日銀は政策修正に踏み切ったものの、急激な金利上昇を容認しない姿勢が示され、緩和政策自体の撤回には当面踏み切らないと市場が見透かしたため〜(略)〜政策修正を通じ、円安抑止を狙ったとされる日銀の思惑とは異なる方向に進んでいる。

金利上昇でも円安進行、143円台 長期金利9年ぶり高水準:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB024I00S3A800C2000000/

金利を上昇させるスピードがゆっくり過ぎるので効果がないよ、ということ。為替に影響を与えるなら金利上昇ペースを上げることだと明言しています。なぜこのようなことになったのか。それは、金利が0.6%になったとき日銀が国債の買入れを行ったので「急激な金利上昇を容認しない日銀」と判断されたのです。日銀としては安全運転で走行していたのがバレてしまった感があります。その安全運転スピードが「緩和政策継続」と瞬時に判断されたのでしょう。予想以上の速い展開が発生していると感じます。

今後は

この状況に対して、財務省がどう対応するのか、今後の展開が注目されます。日銀の為替政策としての効果が限定的であった場合、次の一手として財務省が為替介入に踏み切る可能性も考えられるでしょう。

経済学の視点から見れば、円安は輸出企業にとって有利な場合が多く、経済全体の成長を促進する可能性もあります。しかし、それと同時に、インフレーションへの影響や輸入コストの増加など、マクロ経済への多岐にわたる影響も懸念されます。そのため、為替介入しなければならないと財務省が決断することもあると感じています。

まとめ

今回の動きが、単なる市場の一時的な反応なのか、それとも日本経済に対する深刻な信号なのか、今後の検証が必要となってきます。目が離せない展開がスタートしています。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆