トップに情報が届かない

2023年は活動が再開され、様々な事象が現場で発生するようになりました。中でも、社長に報告されない、伝達されない事象を複数目にするようになったのが印象的です。その背景には、次のようなことが考えられます。業績好調の会社の場合、現場で「(業績がいいから)わざわざ社長に伝えなくてもいいのではないか」という考えが浸透していることが挙げられます。最近でも「なぜ、そんなことを社長に伝えるんだ」 と言われたことがあります。忖度がはたらいているのです。このような事象の発生は組織にとって非常に危険だと感じる次第です。

情報がトップに伝わらない現象の背景

実際に、業績好調な時期には、社内での報告や相談が減少することが多い。その原因として、社長からの評価が下がることを恐れていたり、マイナスのフィードバックを避けるために、問題や課題を先送りにする傾向があるからです。初めて訪れたある会社での体験を思い出します。その会社は、過去数年間、業績が好調でした。しかし、社内体制は社長に案件やプロジェクト進捗をあえて報告しない文化になっていました。問題を先送りにする、課題を未解決のまま放置する風潮だと感じたのです。粗相がないようにしたい、という気持ちの表れでしょう。「大過なく時間が進んでほしい」と願う行動なのかもしれません。

組織の基準値が下がる危険

こうした報告がされない、真実が伝わらない組織は、基準値が下がっていると判断しています。情報がトップに届かないと、組織の判断基準や方針が実際の現場の状況とは異なる方向に進んでしまう恐れがあります。方向性を間違うことになるでしょう。事実を元にしない経営判断の精度は下がるだけです。好調なときに崩壊の芽が成長することになってしまいます。

三現主義の重要性

これらの事象を通じて、「現場、現物、現実」という三現主義を再認識しました。組織のリーダーは、現場の実態を直接知り、真実を知ることがカギになります。三現主義を忘れずに、組織の健全な成長を目指すべきと感じます。

三現主義:現場・現物・現実
机上の空論ではなく、実際に“現場”で“現物”を観察し、“現実”を認識した上で問題解決を図るという考え方のこと。

https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/sa/3rp

まとめ

客観的な事実も組織の力学がはたらくとプラスにもなり、マイナスにもなります。全体最適を優先として考えていても、部分最適が頭から抜けない人にとっては、「どうしてそんなことを言うのだ」と怒ることになるのでしょう。こうしたことも発生するぐらい企業活動も戻っているのを感じます。プラス面も進みますが、マイナス面も大きく進捗する時期なのかもしれません。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆