経験がないのに

新卒入社や未経験者など、働いた経験がない人から「理不尽なことにはNOと言いますので」という発言が入社後にあるようです。この現象、ひとつだけではないので、何か理由があるのでしょう。かつてなら「経験がないのにどうしてそう言えるのか」と驚く声もあったかもしれません。しかし、最近ではよく聞く発言内容であり、単なる個人の意見である、というだけでは解釈しきれません。この背後にある要因を考えてみたいと思います。

情報の透明性とアクセスの容易さ

最近はインターネットの普及により、企業の内情や働き方に関する情報が公開されやすくなりました。SNSや口コミサイトを通じて、企業の評判や働きやすさをリアルタイムで確認できる。このため、未経験者でも「理不尽」な状況に対する警戒心や期待が高まる傾向があります。ブラック企業とホワイト企業の2軸でしか判断しない人も増えてきました。白か黒しかないのです。特徴的な事象です。

世代の価値観の変化

ミレニアル世代やZ世代といった新しい世代は、前の世代とは異なる価値観や働き方を求めています。彼らはワークライフバランスや自身の生きがいを大切にし、そのための環境を求める傾向があります。そのため、自分を守るために理不尽なこと、理不尽なルールには拒否反応を示すのでしょう。顕著な傾向だと思います。

社会全体の働き方の変革

働き方改革やダイバーシティの推進など、企業が従業員の働きやすさや多様性を尊重する動きが強まっています。この流れが、未経験者にも「自分の意見や価値観を大切にして良い」というメッセージを送っているのかもしれません。社会全体の変化や価値観のシフトが発生していると思います。未経験者の意見を単なる若さゆえの発言と切り捨てるのではなく、彼らの声に耳を傾け、企業や組織としての改善点を見つけることが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。大切なポイントです。

新人教育も変わる

強い意志を持つ人へも教育は悩む人も多いでしょう。ただ、自分の価値観や信念をしっかり持っており、それは時として企業文化に新しい風をもたらす可能性を秘めているので人財としては可能性が高い。そのような強い意志を持つ新人を適切に指導するためには、以下のポイントを心掛けることが大切だと考えています。

コミュニケーション

新人の方の意見や感じる不満をきちんと聞き取ること。ここは外せません。彼らが「理不尽」と感じる背景や理由を理解することで、適切な指導や対応ができるようになります。ときには「真実はひとつしかない」と言う人も出てくるかもしれません。こうした発言には、ある種の快感もともなっており、なぜそう感じるのかじっくり聞いてみたい部分でもあります。

柔軟性

「NO」という意見も、時として企業の成長や改善に繋がる可能性はあります。そのため、新人の意見を一律で否定するのではなく、柔軟に受け入れる姿勢を持つことが求められます。柔軟性を持ちながら、新人の柔軟性を消さないようにすることです。正しい、正しくない、ではなく、感受性や感覚、そして価値観を理解する柔軟性が求められているでしょう。

まとめ

「理不尽なことにはNO」という新人は、エネルギーがあります。パワーもあるかもしれません。そこは評価すべき内容です。そのエネルギーを受け止め、その意見や提案を適切に取り入れるためには、上記のポイントを意識した教育の仕組みや環境作りが必要です。独自の視点を尊重し、企業の成長につなげることが、これからの新人教育の鍵となるでしょう。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆