6倍まで膨らんだ

最初は日銀についてです。日銀の総資産残高は735兆円になっており、10年前と比較して約3.5倍に膨らんでいます。通常は日銀の総資産が増えると市中に出回るお金が増加するのですが、日本では、そうなっておらず、壮大な実験は失敗だったと辛辣な評価をする人たちもいます。

これを世界中(主要中央銀行)という視点で見るとどうなるのか。2008年と2022年を比較すると4兆ドルから25兆ドルへ増加しています。
・2008年:4兆ドル
 ↓
・2022年:25兆ドル
6倍にまで膨らんでいるのです。危機対応を緊急で行ったためにマネー供給量を一気に増加させた経緯があるのです(おおよそ10兆ドル増加:約1400兆円)。その影響が予想外のインフレという形になって表出しており、各国では金利を急上昇させて、マネーの吸収をしている状況です。

リーマンショックが起きた2008年、アメリカ、ユーロ圏、日本のマネーの供給量はあわせておよそ4兆ドルでした。その後起きたユーロ危機が収束したあとも経済の下支えが必要だとして中央銀行のマネー供給量は増え続けました。

新型コロナの感染拡大という危機対応で金融緩和は一気に増加し、2022年にはリーマンショック時の6倍を超える25兆ドルにまで膨らんでいたのです。これがインフレを引き起こす要因の1つとなり、そして急速な利上げをせざるをえない状況を作り出していったのです。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/11/17/35934.html

ソフトランディング

あらためて振り返ってみると巨大なマネー供給だったことを実感します。その影響は次のようなところに出てきており、今後は、どうやってソフトランディングさせるのかに注目が集まっています。

  1. 急激なインフレーション
    マネー供給量の急激な増加は、物価の上昇を引き起こします。今回は急激なインフレと表現して間違いありません。
  2. 資産価格の変動
    マネー供給量の増加は、株式市場や不動産市場などの資産価格にも影響を与えます。過剰なマネー供給は、資産価格のバブル形成を引き起こすのが普通ですがセオリー通りに高騰しています。
  3. 金利の上昇
    需要の増加に伴い、中央銀行は金利を引き上げました。これは、貸出金利の上昇と借入コストの増加を意味します。まだ影響が少ないように見えますが、今後は時差で影響が出てくるでしょう。
  4. 経済の減速
    マネー供給量の急速な増加は、経済成長の鈍化を引き起こすことがあります。停滞という表現の方が正しいのかもしれません。

まとめ

マネー供給量は多すぎてイメージができません。単に6倍、3倍といった数値しか頭に残りません。ただ、膨張しているのは事実なので、初めての経験が続いていると考えています。予定通りにソフトランディングできればいいのですが、そうでないシナリオも考える必要があるとは感じます。

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