チャレンジング発言の解釈

日本で「チャレンジ」とはプラスのとらえられ方をします。しかし、海外は違うようです。チャレンジしなくてはならないほど「悪い状況になっている」と解釈されるのです。解釈の違いが大きく違うのを感じます。そのため、日銀の植田総裁が参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことで市場が大きく動きました。
・ドル円が円高に急に動いた
・金利が急に上昇した
といった結果になってしまったのです。市場を動かす意図がなかったと思われますが、ひとつの発言が大きく影響する事例だと感じます。

日銀総裁、年末から来年「一段とチャレンジング」
「マイナス金利の解除、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の見直しが視野に入ってくる」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB071J30X01C23A2000000/

今後は

日銀植田総裁が就任して9ヶ月目に起こった事象ですが、これまで植田総裁は丁寧ね表現をしてきました。上品な表現で発言をしてきたので、十分注意していたと思われます。それが、ここにきて失言してしまったわけです。今後は、以前より丁寧でおとなしい発言になっていくと予想できます。そのため、見えにくい日銀になる可能性が高くなりました。

日銀関係者は中央銀行として将来の方針を発言することがほとんどありません。米国の中央銀行は今後の見通しを発言するので予想がしやすい面があります。しかし、日銀はそのようなことをしません。そのため、突然方針転換を行ったりした事象が黒田元総裁のときには見られました。2022年12月の方向転換は記憶に新しいところです。今後もそのような展開になると思っておいて間違いはないでしょう。

含み損

日銀の方向性は世界の注目です。というのは、日本だけ低金利状態だからです。金利は市場によって左右されるものですが、日本は海外と比較すると、ひとりだけ低金利なままで推移しています。そうなると、日本の金利が上昇すると予測するのは普通で、それが「いつになるのか」に焦点が当てられるのです。しかし、日銀はそう簡単に金利を上昇させることができません。日銀の総資産残高は過去最高になっており、金利上昇によって国債の大きな含み損が出るからです。

2023年9月末時点で日銀保有の国債は10.5兆円の含み損になっています(過去最大の評価損)。
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB286UT0Y3A121C2000000/ )
ただ、日銀は国債を時価評価していないので「問題はない」としています。これを外部はどう判断するのでしょうか。そこが今後の争点になると予想しています。

まとめ

年末になると日銀からは話題が出てきます。12月に行われる日銀会合が注目されるのはそのためでしょう。今年も何かが発生するのではないかと気になるのです。タイミングは分からなくても、いずれ日銀が方向転換するのは予測された既定路線で、その影響は考えておかなければなりません。さらなる金利上昇は見込んでおいて損はありません。そのために手を打っておくことだと思います。

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