開発当初は
製品開発の裏側は興味深い。当時の開発陣のやりとりが掲載されているのを見ると、議論をしているのがわかります。トヨタ自動車のハイブリット車、プリウスの初代を開発したエピソードが出ていました。開発スタート時に「ABS/エアバックの標準装備ですらコストがかかると激論している最中、お客様は、燃費なんかには、もっとお金を払わない」と辛辣に言われたそうです。1994年当時の話です。約30年前のことですが、先進的過ぎる製品を開発するには、こうした社内の抵抗が出てくるものだと改めて実感しました。
プリウス開発に見るアジャイル開発要素と今時の進め方:続編 / The Agile Development Elements and Current Approach as Seen in Prius Development: Sequel
https://speakerdeck.com/shinichi9987/the-agile-development-elements-and-current-approach-as-seen-in-prius-development-sequel
開発の教訓
トヨタ自動車の初代プリウス開発は、アジャイル開発の教科書ともいえる革新的なプロジェクトでした。新しいプロセスを採用しています。そのいくつかをピックアップしてみます。開発のプロセスは常に仮説と検証の世界で、何が正解なのかよくわかりません。最終的にヒット商品が生まれれば、その開発プロセスが注目されたりしていますが、再現性があるのかまでは追求されていないと感じます。いくつか開発プロセスをランダムに取り上げてみます。
アジャイル開発
初代プリウス開発では、アジャイル開発の要素が取り入れられました。アジャイル開発とは、「大きな単位で区切ることなく、小単位でテストを繰り返して開発を進める手法」です。
自動車の他社では、アジャイルプラクティスを駆使して電気自動車の開発に成功し、市場での覇権を競っているところもあります。アジャイルプラクティスとは「顧客のニーズや欲求についての仮説を立て、それを検証することを繰り返す」ことを指しています。
両方とも、細かく刻みながら開発を進めているので、軌道修正がしやすい利点があります。・
モブMob
開発はひとりで黙々と作業するイメージがあります。これだと限界が生じてしまいます。個人差によって進捗に影響が出ることもあります。そんな中、時には開発メンバーが同じ場所で、ひとつの画面を見ながら開発を進める手法があります。モブ(mob)です。これだと、画面を見ているので、人の顔が視界に入ってきません。経験年数や年齢に関係なく発言しやすい雰囲気があります。また、盛り上がるとチームワークも良くなる効果があります。
このモブを取り入れることで結局のところ開発サイクルが短くなり、開発日数も短縮できる効果があります。一気に仕上げてしまう方式です。これは開発だけでなく、他の職種でも応用できると思います。最初は1人で考えますが、意見を持ち寄りながら一気に解決までたどり着くので時間的に有益ですし、情報共有や知識共有、経験共有もできるのが利点です。
まとめ
初代ハイブリット車の開発プロジェクトは、アジャイル開発の要素を体現し、開発プロセスに多くの教訓を残しています。このプロジェクトは、技術革新だけでなく、チームワーク、信頼関係の構築、心理的安全性の確保といった組織運営の面でも学びがあります。取り入れられるところはすぐに試したいところです。モブ型ミーティングはやってみたい領域です。
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