米国で広がる破滅的消費の現象

米国の若者の間で「破滅的消費」が広がっています。この現象は、経済的な未来に対する悲観的な見通しや、即時の満足を求める文化が背景にあります。具体的には、どういうことでしょうか。昨年から米国ではクレジットカードの債務残高は右肩上がりで過去最高、延滞率も上昇しているのです。支払えないことを自覚すると最後に破滅的消費をする人が出てくるのです。米国に限った現象ではありませんが、増加傾向にあることは注目です。

破滅的消費とは

破滅的消費は、自分の経済的な能力を超えた消費行動や、将来の経済的な安定性を犠牲にしてでも、現在の満足や楽しみを優先する傾向を指します。自暴自棄になって買い物に走る、という感じでしょうか。買い物によってストレスを解消する現象です。ストレスの解消はさまざまな行動にあらわれますが、今回取り上げる破滅的消費は珍しいと感じます。

背景には何があるのか

破滅的消費の背景には何があるのでしょうか。要因として、下記が考えられます。

  1. 経済的な不安定性
    大学などの教育への投資(ローン)、住宅価格の高騰、不安定な雇用市場など、若者が直面する経済的な不安定性が、将来に対する悲観的な見方を生んでいます。これは米国だけでなく、日本でも「生きづらさ」を感じる人がおり、SNSで語られる事象です。今後も世の中の不安定さが増していくので、ストレスは増加傾向になるでしょう。
  2. 即時の満足を求める文化
    ソーシャルメディアやオンラインショッピングの普及により、即時の満足を求める文化が強化され、衝動的な消費が促進されています。コスパの良い満足が推奨されているように感じることもあります。タイパのよい満足感を求める傾向にあるのかもしれません。
  3. ソーシャルメディアの影響
    インフルエンサーやセレブリティが見せる豪華なライフスタイルに影響され、現実とは異なる生活水準を追求する傾向があります。消費する人、所有する人が目に入ってくる環境にあるのです。知らなければ、感情が出てこないのですが、見てしまうと感情が湧き出てきます。その感情を処理できない場合が増えているのではないでしょうか。ちなみにメディアは「欲望と不安」を増長させているという意見があります。

問題点は

破滅的消費の問題点は想像ができると思います。3点取り上げておきます。

  • 経済的な問題
    過剰な消費は借金や貯蓄の欠如につながり、将来的な経済的な自立を妨げます。20代からの借金が30代でも解消できない人から相談されたこともあります。単なる消費による借金なのですが、返済して減っていくと、また借りて消費してしまうサイクルでした。なかなか抜け出せないようです。
  • 精神的な健康
    短期的な満足に重きを置くことで、長期的な幸福や満足感が損なわれる可能性があります。短期的に解決しても、まだ一定期間が過ぎると同じ問題が発生してくる現象です。
  • 社会的な影響
    消費主義の文化が強化され、持続可能でない生活様式が促進されます。消費するということは、使用できるモノでも買い替えていくことになります。使い切るという文化は損なわれていくでしょう。

まとめ

破滅的消費は、個人の選択だけでなく、社会的な影響や文化的な背景にも根ざしています。この問題に取り組むためには、社会全体での意識改革と支援が必要です。

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