失速なのかEV

電気自動車(EV)市場は急速な成長を遂げてきました。しかし、市場を牽引してきた米国テスラ社も、中国の電気自動車メーカーの値下げ攻勢によって失速気味になっています。最近では、スマートフォンで有名なシャオミが、テスラよりも安価な電気自動車を発売し、いきなり7万5千台の予約が入るなど、市場の変化が顕著になってきました。市場が急変です。

中国では、電気自動車メーカーの乱立が起きており、50社以上が生産実績を持っています。参入障壁が低いことが、この現象の一因となっています。通常のエンジン自動車は内燃機関であるエンジン開発が参入障壁になっていました。しかしEVは開発や調達が容易なので、参入障壁が低いのです。中には、シャシー部分を提供してくれるメーカーもあるので、今までの自動車産業では考えられないほど、参入障壁が下がったのです。

市場動向

EVメーカーが乱立している中国において、現在電気自動車工場の稼働率が下がっています。一説によると5割程度しか稼働していないようです。5割とはひどい状況で、損益分岐点を下回っている状況だと推測できます。維持が困難になるでしょう。EVの台数が伸びなければ維持できない状況になっています。

マーケティングの理論には「キャズム理論」があります。これは、新製品が初期市場(16%)を超えるときに谷(キャズム)があると言われているものです。普及し始めるときは勢いがあっても、必ずと言っていいほど普及が失速、停滞する時期が来るのです。電気自動車市場も、現在まさにこの時期を迎えているのかもしれません。

キャズム理論では、市場を以下の5つのセグメントに分類しています:

  1. イノベーター(Innovators):新しい技術を積極的に試す人々(約2.5%)
  2. アーリーアダプター(Early Adopters):新しい技術の利点を理解し、早期に採用する人々(約13.5%)
  3. アーリーマジョリティ(Early Majority):新しい技術を慎重に評価し、実用性が確認されれば採用する人々(約34%)
  4. レイトマジョリティ(Late Majority):新しい技術に懐疑的で、大多数が採用した後に導入する人々(約34%)
  5. ラガード(Laggards):新しい技術を最後まで採用しない人々(約16%)

まだ完成度低い

電気自動車はまだ製品の完成度が低い状態にあります。電池の充電時間や航続距離の問題は未解決のままです。これらの課題を解決しなければ、電気自動車の普及定着はできないと予想しています。

一方、トヨタが推進してきたハイブリッド車(HV)は完成度が高く、今後も定着していくでしょう。ハイブリッド車は一般に購入しても30万kmから50万km走行可能です。わたしの周りでも事例があります。実用性が高く、燃費も良いクルマです。多くの人がハイブリッド車を長距離にわたって使用している実例からも、その信頼性と実用性が証明されています。

超えるのはここ

電気自動車が本格的に普及するためには、ハイブリッド車に匹敵する完成度の高い製品が登場する必要があります。バッテリー技術の革新や充電インフラの整備など、まだ多くの課題が残されています。これらの課題が解決され、消費者の信頼を獲得できるような電気自動車が登場すれば、市場は再び成長軌道に乗ることができるでしょう。

しかし、現時点では、電気自動車市場はキャズムを乗り越えられるかどうかの瀬戸際に立っています。メーカー各社は、技術革新と消費者ニーズの把握に注力し、より完成度の高い電気自動車の開発に取り組む必要があります。

まとめ

電気自動車の歴史は実は古いです。馬車から自動車へ移行したとき電気自動車が世に出ています。しかし、普及しませんでした。同じ理由からでしょう。現在も電池問題は課題が大きく、解決するには、新しい電池開発が必要だと感じます。新しい電池開発にどれだけ時間がかかるのかが最も問題であり、それが普及スピードを決定すると考えています。全個体電池がその解決になると言われていますが、いつ出てくるのかはまだわかりません。どの程度の能力を全個体電池が大量生産で実現できるのかもまだわかっていません。これからだと思います。

中国EV、生産変調の兆し
工場稼働率5割程度に メーカー乱立、破綻リスク

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80343100X20C24A4EA5000/

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