原因3つ

ビジネスの世界で戦後から広く活用されているPDCAサイクル。歴史ある法則であり、かつ今でも活用され続けている理論です。戦後の製造業において欠かせない道具であり、改善活動として用いられてきました。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)のサイクルを回し続けることで、継続的な改善により継続的な成長を導いていきます。しかし、PDCAサイクルが途中で止まってしまう現象が見られます。なぜPDCAサイクルは途中で止まってしまうのでしょうか。今回は、その主な3つの原因と対策について詳しく解説します。

主な3つの原因は
①心理的機能不全
②目的を目標と混同してしまう「混同による機能不全」
③理解不足の機能不全
になります。

1. 心理的機能不全

PDCAサイクルを回す上で、最も大きな障壁となるのが心理的な要因です。具体的には以下のような心理が働きます。

  • 失敗を恐れる心理が働き行動に移せない
  • 完璧主義により計画段階で立ち止まってしまう
  • 変化を嫌う心理から現状維持を選んでしまう
  • 成功体験にとらわれ新しい方法を試そうとしない

これらの心理的要因により、PDCAサイクルの「Do(実行)」段階に進めなかったり、「Act(改善)」段階で新しい方法を採用できなかったりします。ようするに、人の気持ち、考え方、感情によって行動が左右されているのがわかります。「やった方がいい」と返答する人であっても行動しない理由はこうしたところにあるのです。

対策

心理的機能不全を克服するためには、以下のような取り組みが効果的と考えています。

  1. 失敗を学びの機会としてとらえる組織文化の醸成
  2. 「完璧な計画」ではなく「仮組みな計画」で前に進む勇気を持つ
  3. 小さな変化から始め徐々に大きな変化に慣れていく
  4. 過去の成功にとらわれず常に新しいアイデアを歓迎する姿勢を持つ

文章にして書くととても簡単な内容です。しかし、文化の醸成や新しい行動を歓迎する雰囲気をつくっていくのは時間がかかるものです。特にリーダーはこの心理的機能不全から脱却させるために粘り強さが必要でしょう。他責にせずあきらめないことです。

2. 目的と目標の混同による機能不全

PDCAサイクルを効果的に回すためには、目的(Why)と目標(What)を明確に区別し、適切に設定する必要があります。しかし、多くの場合、以下のような混同が起こります:

  • 目的(Why)と目標(What)を混同してしまい具体的な行動がズレる
  • 抽象的な目的のみを掲げ具体的な目標設定ができていない
  • 目標があいまいで達成度合いを測定不能

上記以外でも目標を自己解釈するスタッフもいるので注意です。自分のやりたいことが前面に出てくる人です。「その目標ならこれですよね」といって単に自分のやりたかったことを選択しようとします。ここは細かな軌道修正が求められており、繊細に進めたいところです。

対策

目的と目標の混同を避けるためには、以下のようなアプローチが有効。

  1. 目的(Why)と目標(What)を明確に区別し、それぞれを文書化
  2. 測定可能な内容にする(Measurable)
  3. 長期的な目的と短期的な目標の関連性を明確にし整合性を確保
  4. 定期的に目的と目標を見直し必要に応じて調整

3. 理解不足による機能不全

3つ目は理解不足による機能不全。以下のような理解不足が機能不全を引き起こします。

  • PDCAの各ステップの意味や進め方を正しく理解できていない、理解しようとしない
  • データ分析や効果測定のスキルが不足。現状認識不足
  • PDCAを回す意義や重要性が組織内で共有されていない(重要度の共有不足)
  • 業務の優先順位付けができずPDCAに時間を割けない(緊急度の共有不足)

これらの理解不足により、PDCAサイクルの各段階で適切な行動がとれず、結果としてサイクルが先延ばしにされてしまいがちです。

対策

理解不足による機能不全を解消するためには、以下のような取り組みが効果的。

  1. PDCAサイクルに関するトレーニングプログラムを準備。そして継続的な実施
  2. データ分析や効果測定に関するスキル向上のための勉強会の実施
  3. PDCAサイクルの重要性と効果を組織全体で共有するための定期的なコミュニケーションの場を設定
  4. PDCAサイクルを回すための時間を確保するための業務の優先順位付けと業務内容の見直し

まとめ

PDCAサイクルが途中で止まってしまう原因は、心理的機能不全、目的と目標の混同、理解不足の3つに大別されます。これらの原因を認識し、適切な対策を講じることで、PDCAサイクルを効果的に回し続けることができます。取り組むべき解決内容は意外とシンプルなので、粘り強さがあればクリアできるでしょう。逆に言えば、粘り強さがなければ何も進まないですし、何の結果も生みません。そこがポイントです。

——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆