価格設定で誘導
2025年の大阪・関西万博で導入される荷物預かりの料金設定がユニークなので取り上げます。
・会場内の預かり所では1日1万円
・JRの駅では1000円
という、一見すると極端な料金差の設定。一見すると会場の預かり料が高額すぎるのではないかと思われるこの料金設定ですが、実は意図的な戦略が隠されています。
「禁止」から「誘導」へ
通常考えるのは、「大型荷物持ち込み禁止」といった規制的なアプローチ。しかし、海外の方も増えている日本では、それだけでは抑止力になりません。言語では対応が限られるのです。そこで、数字を使った誘導が料金設定なのです。料金設定を通じて来場者の行動を自然に誘導する手法を選択したわけです。
言語より数値の方が伝わりやすいですし、料金設定の場合、高額だと痛みも感じるので、「回避行動」を取る人が増えるのです。このアプローチは、わかりやすく奥が深いです。
二段階料金システム
特筆すべきは、バス乗換地点のJR駅に設置される預かり所での「1000円」という料金設定です。会場での1万円と比較すると、この金額は極めて合理的。この料金差をJR駅で見せられたら、1,000円を選んでしまうでしょう。これにより、下記を実現できるようになります。
- 会場内の混雑緩和、荷物トラブル回避
- 来場者の動線最適化
- 安全性の向上
応用できる内容
この取り組みは、単純な規制ではなく、インセンティブ設計を通じて人々の行動を最適化する手法です。イベントだけなく、大勢の人に向けたメッセージ手法としては参考になる事例ではないでしょうか。実際に他でも応用ができると思います。
まとめ
大阪・関西万博の荷物預かり料金設定は、一見すると極端に見えるかもしれません。しかし、その背後にある戦略的思考と来場者への配慮を理解すると、イベント運営を成功させる興味深い事例であることがわかります。人は注意をしたり、規制しても、その通りにならないことが普通にあります。1970年に行われた大阪万博でも入場ゲートを通った入場者が走り出す現象が多発。ケガをする人も出たので、歩くように伝えましたが、やはり走り出してしまいます。そのとき編み出された手法は、入場するときに1人ずつ案内図を渡すことでした。これにより歩く人が増えたのです。人の行動を誘導するには、心理的な側面からのアプローチが必ず必要です。万博などのイベントの取り組みは参考になる事例だと思います。
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