認めると許す、任せると放任

日常のコミュニケーションの中で、同じ意味のように感じる言葉でも、実は微妙に異なるニュアンスや背景があることが多い。今回は、「認める」と「許す」、そして「任せる」と「放任」という言葉の違いに焦点を当てて、それぞれの持つ意味の深さを探ってみたいと思います。

「認める」と「許す」の違い

最初に取り上げたいのは、認めると許すの違いについて。それぞれの言葉を定義してみます。

・認める:「認める」は、何かの価値や実在、能力などを肯定的に評価し、それを受け入れることを意味します。例えば、他者の意見や考え、能力を正当だと思い、受け入れる態度を指します。

・許す:「許す」は、過ちや失敗などのマイナスの面を受け入れ、その人や事柄を非難しない態度を指します。また、過去の過ちを清算し、新しいページを開くことを意味することもあります。

認めなければならない、と新任リーダーが意識すると、なぜか「許す」方向に行ってしまうことがあります。善悪の判断は明確にしなければならない一線があるのですが、それを曖昧にして「認める」ことを優先するようです。そうなると、善悪の「悪」を許してしまうことがあり、組織の基準が崩れていくことがあるのです。「どうしてそれを許すのですか」と確認すると「認めただけです」という返答をもらったこともあります。

「任せる」と「放任」の違い

次に任せると放任について定義してみます。

・任せる:「任せる」は、自分の仕事や役目を他の人に委ね、その人の能力や判断を信頼して行動させることを意味します。この場合、結果に対する責任感や監督の要素は残っています。

・放任:「放任」は、他者の行動や選択に対して、監督や指導をせず、何も制限しないで自由にさせる態度を指します。この場合、過度な放任はネガティブな結果を招くことがあります。

任せると放任については、失敗経験がある人も多いので、理解しやすいと思います。任せていたつもりが放任だった、という経験です。新しいリーダーにチームを任せていた。そのつもりだったので、何のアドバイスも一定期間しなかった。それが裏目に出て、結局失敗してしまった。最悪のときは不祥事まで起きてしまいます。そのとき初めて「放任」だったことに気がつきます。なので、放任という認識は途中の段階では存在していなかった。何かマイナスなことが発生したときに過去を振り返り放任だったと自覚するだけなのです。

まとめ

言葉の選択は、私たちの考えや感じることを他者に伝える際の大切なツールです。微妙なニュアンスの違いを理解し、正確に言葉を使うことで、より良いコミュニケーションを実現することができます。今回取り上げた「認める」と「許す」、「任せる」と「放任」は、日常生活やビジネスの現場でよく使用される言葉です。それぞれの言葉が持つ意味の深さや背景を理解し、適切な状況で正確に使うことで、相手との関係性をより深めることができるはずです。使い分けができるようになりたい部分です。

——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆