本当に“習慣”になってるの?
「毎日かならず30分は資格勉強しよう」と、新しい目標を立てては、いつの間にかフェードアウトしてしまう。そのような経験、だれにでもありますよ。「意志が弱いからダメなんだ」と責めてしまうこともあるかもしれません。でも、少しここで考えたいポイントがあります。その行動が続かないのは、本当に「意志」だけの問題でしょうか。
実は、「続ける」と「習慣になる」の間には、大きな壁があります。そして、その壁をどれだけ乗り越えられたかを科学的に測定できる手法も存在しています。それが「SRHI(自己報告式習慣指数)」です。今回は、このSRHIを取り上げます。
「SRHI」とは
SRHI(Self-Report Habit Index)は、ひと言でいうと「その行動が、どれだけ無意識レベルで自動化されているか」を測るための心理学的なモノサシです。「毎日やる」という行動の頻度だけを記録するのとは、わけが違います。SRHIが注目するのは、その行動の「質」。つまり、習慣の”強さ”そのものを測定する手法です。
「習慣の強さ」の3つの柱
SRHIは、主に以下の3つの側面から、あなたの行動がどれだけ習慣化しているかを明らかにします。
- 自動性(Automaticity)
→「考えなくても、勝手に体が動いている」状態- 朝起きたら、無意識に準備、支度をしている
- 車に乗ったら、自然とシートベルトを締めている
- 自己同一性(Self-Identity)
→「その行動をすることが、自分らしさの一部になっている」感覚- 「ランナーである自分が、走らないのはおかしい」
- 「本を読む人間として、読書時間は欠かせない」
- 感情的な手がかり(Emotional Cue)
→「それをやらないと、なんだか気持ち悪い」「物足りない」と感じる状態- 夜、歯を磨かずにベッドに入るときの違和感。
- いつものコーヒーを飲まないと、一日が始まらない感じ。スッキリしない。
項目例
実際にどのような質問で測定するのか、日本語版のSRHIからいくつか例を見てみましょう。「習慣にしたい行動」を( )に入れて、考えてみてください。
1 ( )は現在,頻繁に行っている | 2 ( )は自動的(無意識的)にやっている |
3 ( )は思い出さなくても,やれる | 4 ( )はやらないと,気持ちが悪い |
5 ( )は意識して考えることなくやっている | 6 ( )はやらないようにするには,我慢する必要がある |
7 ( )は毎日・毎週・毎月の決まり事のようになっている | 8 ( )は気がついたら始めていることがある |
9 ( )をやらないことは考えられない | 10 ( )はやり方をいちいち考える必要がない |
11 ( )をやることは,とても自分らしいことだ | 12 ( )はすでに長い間,やってきている |
これらの質問に
1)全く当てはまらない
2)当てはまらない
3)やや当てはまらない
4)どちらでもない
5)やや当てはまる
6)当てはまる
7)とても当てはまる
という7段階で点数をつけ、合計点数が高いほど、その行動はあなたにとって「強い習慣」になっているといえます。たとえば、嗜好品の習慣は強い習慣になっていることがわかると思います。
まとめ
悪習は簡単に身につきます。しかし、良い習慣は時間がかかります。ビジネスにおいて、報告書を書く、日報を書くといった簡単なことさえ、習慣化できないケースがあります。会社のクルマをキレイに保つ、といったこともできないケースもあるでしょう。そのようなときは、SRHIのようなツールを使って、行動を客観的に「測定」してみることです。どのレベルまで習慣化されているのかがわかります。
自分の現在地を知ることで、単に気合を入れるのではなく、「自動性を高めるにはどうしたらいいのか」といった、より効果的な次の一手が見えてくるはず。意志の力だけに頼るのはやめて、科学的な視点で、「続ける力」を育てていければと思います。
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