アジェンダ設定理論

毎日ニュースを見ていると、特定の話題ばかりが連日大きく取り上げられていることに気づくことがあります。なぜ、ある話題は朝から晩まで報道され、別の話題はひっそりと扱われるのでしょうか。取り上げ方の大小があるのです。気がつかないこともありますが、ニュースの記事をチェックしていると、取り上げ方の優先順位がどうなっているのか知りたくなるのです。

実際、マスメディアがどのトピックをどれくらいの頻度や大きさで扱うかによって、「今、何が重要なのか」のとらえ方が変わってしまいます。操作とは言いませんが、それに近いことが発生していると感じます。このような現象を説明するのが「アジェンダ設定理論」です。

アジェンダ設定理論とは

アジェンダ理論は、メディアの影響力を端的に示しています。メディアは、特定の意見(例:A案に賛同してほしい)を強制する力はそれほど強くありません。しかし、「今はこの問題について考えるべきだ」という関心の対象を指定する力においては、絶大な影響力を持っています。これは否定できないでしょう。扱う回数、頻度、扱う時間数の合計によって影響力は大きくなるからです。

つまり、ニュースで連日「物価高」が取り上げられれば、たとえ個人の生活に変化がなくても、社会全体が「今の重要課題は経済だ」と感じるようになります。逆に、報道されなくなった問題は、解決していなくても人々の関心から消えていきます。

2025年において印象に残る漢字は、
・「高」
だったとされています。物価が高い、価格が高い、というのもありますし、首相の苗字にも「高」が入っているからです。これも、取り上げられる頻度によって印象として残るのでしょう。

ビジネスでの応用

この理論は、政治やニュースの世界だけの話ではありません。企業経営やチームマネジメントの場でも同じことが起きています。
・『リーダーの発言が組織の優先順位を決める』
のです。組織のリーダーが毎日のように、同じことを発言したり、取り上げたりすれば、それが組織の課題になっていくのです。たとえば、リーダーが「売上目標」のことばかりを会議で話していれば、スタッフは
・「この会社では売上が全てであり、品質や顧客満足は二の次だ」
と認識するでしょう。その結果、無理な売り込みが増えたり、サービスの質が低下したりする可能性もあります。

逆に、リーダーが
・「お客様の喜び」
・「スタッフの働きやすさ」
について繰り返しメッセージを発信し続ければ、スタッフの意識はそのテーマに向き、組織全体の行動もその方向に向かっていくのです。

まとめ

人は自分で課題を探しているわけではありません。無意識のうちに「何が重要か」という優先順位を外部から刷り込まれていることもあるのです。そのほうが考えなくてすみますし、楽です。
・「なぜ今、この話題が盛り上がっているのか」
・「逆に、報道されていないけれど重要なことはないか」
という視点を持つと、それはそれで差別化になるでしょう。世の中には「アジェンダ設定理論」があることを知りながら、情報には接しておくと客観的な意見を持てるようになると感じます。

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