先行きの試算
日銀から「日本銀行の財務と先行きの試算」が発表されています。このような情報発信は日銀の意図も含んでいるので、そん点を考慮して読み解いていきたいところです。日銀OBの方が、「レポートを書くように言われるが、着地点はここと指示される」というようなことを言っていました。その方は、それがイヤで退職されたようです。今では、経済研究所で自由に書いているようです。
今回は、「日本銀行の財務と先行きの試算」の内容で気になったところをピックアップしていきます。
資産は増加
日銀の試算は増加し続けていました。黒田元総裁の10年間で5倍まで増えています。500兆円台になっています。この資産のうち、国債の間接的な引受がほとんどです。しかも他の中央銀行が行なっていない株式の間接所有(ETF)も入っているのが特徴です。
現在、日本の金利はゆるやかに上昇しています。そうなると、保有国債の時価は下落します。その点については、
国債の時価下落によって評価損が生じたとしても、満期到来を待たずに保有国債を売却することがなければ、期間損益に直接影響を与えることはない。売却をしない限り実現することのない評価損益と期間損益は異なるものである(図表7)。
と説明しているのです。時価下落になろうが、関係ないというスタンスです。ここがさまざまなところで論争になっているポイントでもあります。バランスシート上は時価下落は関係ありませんが、日銀のバランスシートを評価判断するのは他人です。その他人がどう判断するかはわからないのです。日本円が脆弱通貨になったのではないか、と海外のメディアに書かれていますが、それも他人評価のひとつです。自己評価で合格していてもあまり意味がないのだと感じるのはわたしだけでしょうか。
先行き、自己資本はギリギリのところを試算している。
自己資本試算結果
あと注目は自己資本試算結果です。日銀は現在保有する国債を減少させつつあります。ゆっくりではありますが減少させ、本来の姿にしたいと思っています。しかし、そのとき、
「バランスシートの縮小局面に入ってしばらくの間は、付利金利の引き上げによる支払利息の増加により、収益が下押しされることとなる。」
とあり、その過程では
「一時的に赤字が発生する可能性はある」
と言っています。赤字が発生シナリオもないわけではない、ということです。その場合、自己資本が減少していくことになりますが、自己資本の試算結果は下記のようになっています。自己資本は一時的な減少を見込んでいるのです。試算結果では債務超過にはなっていませんが、これを実現するには絶妙なハンドリングが必要なのではないでしょうか。あくまでも、いくつかの条件が重なったときに、こうなると言っているだけのようにしか見えません。金利の上昇スピードや国債の減少スピードなどが、シナリオ通りに進んだらこうなる、ということだけです。
まとめ
このように見てくると、日銀の今後は一時的な赤字を出しながら健全な姿に戻したいという要望が見えてきます。当然ながら債務超過になったときのこともシミュレーションしているはずです。2025年から数年間は日銀の赤字発生も想定内ということになりますので、驚かないようにしたい部分です。
日本銀行の財務と先行きの試算 日本銀行
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j15.htm
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