「途中売却」前提は本当に成立するのか

「長期住宅ローンを組むけど、10年か15年くらいで売るつもりだから」

マンション購入を検討している人から、こう考えている人もいます。長期ローンで購入し、資産価値が上がったタイミングで売却する。残債を完済して、差額を手元に残す。あわよくば利益も出る。そんな青写真を描いて購入に踏み切っているようです。

たしかに、ここ数年の不動産市場を見れば、その期待にも根拠はあるように見えます。都心部を中心にマンション価格は上昇を続け、「買って正解だった」という声が目立つのです。自分なんかは、どうしても「現状が続かないのでは」と反射的に思ってしまうので、上昇が永遠にはないのではないかと疑ってしまいます。

本当にその前提は盤石なのか。今回は、その前提を取り上げます。

「途中売却前提」の構造

まず、この戦略がうまくいく条件を整理してみましょう。

途中売却が成立するためには、売却時点でのマンション価格が、少なくともローンの残債を上回っている必要があります。つまり「物件価格の維持または上昇」と「ローン残債の着実な減少」という二つの条件が同時に満たされなければなりません。

ところが、長期ローンの初期は返済額の大部分が利息に充てられるため、元本はなかなか減りません。たとえば35年ローンや50年ローンで最初の10年間に返済した総額のうち、元本の減少分は想像よりもずっと小さいのです。つまり、10年後に売却しようとしたとき、残債は思ったほど減っていない可能性があります。

この状態で物件価格が購入時と同程度、あるいは下がっていたらどうなるか。売却してもローンを完済できない、いわゆる「オーバーローン」の状態に陥ります。

楽観シナリオだけで判断

この戦略を選ぶ人の多くは、「価格は上がるだろう」という期待をベースにしています。前提条件が揃ったときだけ成立する状態。これは、条件がひとつでも揃わないようになったら、価格上昇は維持できなくなるでしょう。 不動産価格が一方向に上がり続ける保証はどこにもないように感じます。リスクがあることを理解すると、「途中売却で問題ない」という前提がいかに多くの好条件に支えられているかがわかります。

ワーストシナリオを描くこと

ワーストシナリオを考えることは、悲観的になることではありません。「最悪の場合でも自分は耐えられるか」を確認する作業です。たとえば、こんな問いを自分に投げかけてみてください。

もし10年後、マンションの価格が購入時より20%下がっていたら、自分はどうするか。

1)売却せずに住み続けるか
2)損しなければ売却するのか
3)損してでも売却するのか

このような詳細シミュレーションを最悪な状況まで想像して判断する作業は意味があるでしょう。

まとめ

派手な成功談に惑わされず、「最悪でも大丈夫」という地盤の上に立つことを常に考えてしまいます。考え過ぎのように見えますが、一度だけワーストシナリを描けば、あとは、それほど悩むことはありません。状況が変化したとしても、想定内なので、焦らないのです。決断のときには、このようなプロセスを欠かさないようにしましょう。

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