【fjconsultants365日Blog:3,740投稿目】fjコンサルタンツ藤原毅芳 執筆
後発者でも得をすることがある
「とにかく急いでくれ、いくらかかってもいい」
と新しいビジネスモデルを開発した経営者はリスクを取りながら先行者利益を狙いに行きました。
ある設備を導入するのに結局のところ1億円近い投資がかかってしまったのです。
その後、どうなったのか。
先行者利益は得られず会社は解散。
後から振り返った時に、1億かかった設備投資が実は500万円程度で完成させられることに気が付いたそうです。
新しいビジネスモデルを思いついた時に興奮してしまうのが普通です。
冷静になるはずがありません。
しかも、急いで広げていかないと他社に占有されてしまうという恐怖感が出てしまうのも当然の流れです。
そのため、経営の判断も見誤りやすくなってしまいます。
しかし、すべてのケースで先行者利益ばかりなのでしょうか。
ここで先行者利益と後発者利益を冷静に見てみたいと思います。
ファースト・ムーバー・アドバンテージとは
ファースト・ムーバー・アドバンテージとは新しい産業、新しい分野に先行して参入し優位性を持つこと、とされています。
優位なポジションを確保できるというメリットがあるのです。
「ドローン」の分野は現在、ファースト・ムーバー・アドバンテージがあると思われています。
ドローン産業のための新会社設立が全国的に広がっています。
レイト・カマー・アドバンテージとは
レイト・カマー・アドバンテージとは既存の産業や既存の分野に後から参入し
優位性を得ることとされています。
わかりにくいですが、技術革新が発生する業界ではよく発生します。
テレビメーカーの業界でもレイト・カマー・アドバンテージが発揮されたことがあります。
ブラウン管テレビから液晶テレビに移った時に後発者メーカーが優位性を持ったのです。
液晶テレビはOEMでも製造できる商品だったので身軽なベンチャー企業が後から参入しポジションを確保できた、ということ。
後発者の方が身軽だったというメリットを活かすことができる状況が発生していたのです。
こうした状況では後発者がメリットを得ることも可能なのです。
先行者利益の事例
先行者利益の事例を見ていきます。
米国から真っ先にビジネスを持ってくる
タイムマシン式と呼ばれるビジネス展開方法です。
米国で流行っているビジネスをそのまま日本に持ち込む方式。
タイムマシン式経営を得意とする会社もあります。
たとえば、ソフトバンクの沿革を振り返るとこのタイムマシン方式で先行者利益を稼いできたことがわかります。
真っ先に日本で展開して、一気にシェアを勝ち取る戦略です。
しかし、携帯電話のボーダフォン買収ではその時の最後発であったので先行者だけしかないわけではありません。
後発者利益の事例
先行者利益はメディアに取り上げられることが多いですが、後発者利益についてはさほど掲載されません。
メディアは先進性のある内容を掲載することを使命としているので後発者利益事例が出てこないのは当たり前なのです。
しかし、後発者利益は意識して見るとかなりあることがわかります。
電気自動車
自動車産業にこれから参入してくる企業があります。
名乗りをあげているのは掃除機メーカーのダイソンです。
電気自動車の販売を予定しています。(2019年10月に開発中止)
家電メーカーが電気自動車をつくるということです。
(追記:Appleが電気自動車の開発をしていると言われています。2021年5月)
自動車産業の後発者として参入します。
先行者とは100年近くの差があります。
ただこの参入を後発者として見るかは意見が分かれます。
自動車産業では後発ですが、電気自動車の分野では先行者に当たるからです。
電気自動車は本格参入している企業は少なく、まだ利益が思ったほどあがっていません。
電気自動車の先行者利益はまだ未確定の状態です。
5G の通信業界
スマホの通信が4Gから5Gへと今後切り替わっていきます。
1周まわって最後にキャリア参入をするのが楽天です。
参入を表明した時に賛否両論入り乱れました。
「大丈夫か」「大火傷するのではないか」といった論調も見られました。
これがフタを開けてみたらそうではなかったのです。
通信キャリアの設備投資を先行者とまったく違う手法で参入すると発表したのです。
(加入者400万人突破:追記 2021/05)
具体的には、通信の物理的な設備であるルーターを使わずに完全仮想化でまかなうと発表しています。
ハードウェアを使わず、すべてソフトウェアで行うというもの。
これは、画期的な話しです。
設備投資の額も少なくて済みますし、4Gから5Gになるような変化でも設備入れ替えが不要。
これこそ後発者利益と呼ぶことができる内容です。
後発者のメリットとは
後発者のメリットは
・限りなく失敗をゼロにできること
です。
先行者が成功することもありますが失敗することもあります。
失敗するのを見て参入しないこともあるでしょうし、先行者が成功することで参入を決断できるメリットもあります。
先行者が新たな市場をつくる場合は、後発組の方がリスクを減らせるということです。
楽天のように先行者のメリットをデメリットにしてしまう戦略を選択することも可能です。
まとめ
このように見てくると先行者のみが利益や優位性を得られるわけではないことがわかります。
後発者でも優位性というポジションを確保できるタイミングがあることを知っておくことだと思います。