顧客の分類の進化

企業にとって顧客の存在は不可欠です。顧客がいなければビジネスは成立しません。その顧客にもさまざまな分類があります。企業にとっては長く付き合っていただける顧客が価値が高いといわれています。ただ、最近では長く付き合っていただける顧客にもいくつかのグループがあるのがわかっています。詳細な分類がされているのです。その中のひとつ、V.クマー氏の分類を取り上げます。

米国 ジョージア州立大学  V・クマー教授

https://www.drvkumar.com/

CLV:顧客の生涯価値

顧客が長く製品・サービスを購入してくれる場合、1回が少額であっても継続することで累計購入金額は大きくなります。生涯にわたって支払い続けるものもあり、累計金額は高額になることもあります。これを顧客の生涯価値:CLVと呼んでいます。

CLVの事例としては、生命保険があげられます。毎月数千円ずつ支払いますが、最終的には数十年支払い続けるので、累計では数百万円から1千万円以上の支払いになります。万が一のことを考えて支払うのですが、生命保険会社にとっては毎月が少額であっても継続年数が長いので、ひとり当たりの価値は非常に高いのです。

大人になってから手放せない製品としては、自動車がありますが、最近では学生時代からスマホを所有するので欠かせないツールとなっています。スマホは本体価格だけでなく、写真などのデータを保存しておくクラウド(ストレージ)にも毎月数百円を支払うこともあり、生涯の累計は大きな額になります。iPhoneを販売しているApple社はスマホなどのハードウェアの販売金額が無くなっても、アプリ販売手数料、音楽聴き放題、動画サービス、ストレージ料などの収益だけで会社が維持できるようになっています。機器の販売だけでなく、毎月課金の収益も含めて顧客の生涯価値を高めています。戦略としては隙がありません。

CLV(カスタマーライフタイムバリュー)とは
企業にとってある一人の顧客が将来の関係全体に寄与する価値 (純利益)の予測
生涯顧客価値(LCV)、または生涯価値(LTV)とも表現される

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A1%A7%E5%AE%A2%E7%94%9F%E6%B6%AF%E4%BE%A1%E5%80%A4

顧客の別の価値:CRV

最近は顧客が支払ってくれる金額だけが価値ではない、という定義が提唱されています。そのうちのひとつが顧客紹介価値(顧客の口コミ価値)であるCRV(カスタマー リファラル バリュー)です。リファラルとは「紹介」という意味です。

継続的に購入していただける顧客をさらに分類しています。
①継続的購入・口コミ有り
②継続的購入・口コミ無し
といったような分類です。もっと詳細に分けるならば、口コミの種類や口コミの多少で分けることも可能。

ここでは、口コミによる影響を大きな価値をみなしています。SNSの普及で口コミによる購買活動が盛んになっています。スマホを用いたライブ配信によって製品が売れる現象は今後も大きくなるでしょう。ライブ配信に価値が発生していると感じます。

Kumar, Petersen and Leone(2007)は
顧客生涯価値(CLV;Customer Lifetime Value)と顧客のクチコミ価値(CRV ; Customer Referral Value)を測定し,CLVとCRVの高低で顧客をセグメント分けしている。そのうえで,各セグメントに対して異なるオファーを提供するセールスプロモーションを実施し,プロモーションの効果を上昇させた結果を報告している

https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/36/4/36_2017.019/_pdf

まとめ

このように、顧客の価値も判断が分かれてきました。詳細に分類されるようになっています。マーケティングは最終的に一人ひとりに対応することが可能になるはずです。そこまで分類が進むでしょう。今回見てきたように、顧客価値も「口コミ」の価値が増大したのは時代の流れが要因です。口コミの拡大規模がSNSでは巨大になる可能性があるからです。その点を見極めて顧客価値を判断していきたいところです。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆