ここに来てようやく

自動車業界は一気に値上げの波に見舞われています。各自動車メーカーが一斉に価格を引き上げるという状況が展開。自動車の価格引き上げがこのタイミングになると予想はしていましたが、ようやくです。

理由は、自動車という商品が他の製品とは違い、値上げのタイミングが通常よりも遅いため。特に自動車は個人が直接購入する製品であり、かつ価格が高額なため、価格変動の影響を受けやすい。消費者の負担を考慮して、値上げのタイミングが通常最後になる傾向があるのです。今回は、まさにそのような動きでした。

価格が低ければ、僅かな値上げの場合、消費者の負担は軽微ですが、高額商品である自動車に関しては、わずかなパーセンテージの値上げでも、それが大きな金額になり、消費者にとっては大きな痛みとなるのです。値上げのタイミングを慎重に決定しなければならない商品なのです。

他の要因も

自動車業界における値上げの動きには、さらに特別な背景がありました。それは半導体の供給不足です。この問題は新車の供給に影響を及ぼし、その結果として中古車市場が高騰するという状況を生み出していました。

2023年3月に入ってからは半導体の供給が回復し、高騰していた中古車の価格も落ち着いてきました。そのタイミングで新車の価格が引き上げられたわけです。値上げにはタイミングが必要であり、そのタイミングを逃すと売れ行きに大きな影響を及ぼします。今回のケースでは、値上げのタイミングとしては、状況を考えれば最善の選択だと言えるでしょう。

同じ足並みではない

今年に入ってから、数千点に及ぶ製品の価格が引き上げされました。業界全体で見ても、ほとんどの製品が値上げになったところもあるでしょう。ただ、全ての企業が同じ足並みで動くわけではなく、一部の企業が値下げを行うと、消費者の購買がそちらに集中してしまうこともあるのです。正解のない世界だと認識しています。

価格設定は理論的な部分がある一方で、理論通りに動くわけではありません。それゆえに、戦略を立てつつ、その効果を速やかに検証しなければなりません。素早い修正が発生することもよくあることです。

心理が決める事例

価格戦略ではありませんが、戦略の速攻修正事例を取り上げておきます。
PayPayが2023年8月からPayPayカード以外は使えないと発表した際の反発は、その一例です。一見、大胆な戦略とも思えたその決定は、消費者の強い反発を引き起こし、結局のところ1年半先まで延期するという事態にまで発展しました。

「自社カード以外は排除するとは、思い切ったことをするな」と感じていました。そして周囲にもヒアリングを行ったところ、ほとんどの人が「他社カードが利用できないなら、PayPayは使わないだろう」と否定的な意見を持っていました。これは大きなネガティブ反応と言えます。

新たにPayPayカードを作成する手間を考えると、多くの人がその手間をかけることを避けるでしょう。このような状況を「スイッチング」と呼びますが、大きなメリットが無い限り、または現在使用しているカードに大きな不満がなければ、人々は新たなカードへと切り替える動機を持ちません。この一連の事例から、消費者の行動や意思決定は、結局のところ人間の心理によって決まることがわかります。

まとめ

事例を見るとわかりますが、展開が速く、修正もすぐに行われています。このスピード感が今年2023年の特徴と言えるのではないでしょうか。朝令暮改という表現がありますが、朝に決めたことも夕方には変更になるという意味を頭に置きながら進めたいと感じます。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆