壮大な伝言ゲーム

ビジネスの現場でのコミュニケーションは、実は「壮大な伝言ゲーム」のようなものです。伝言ゲームとは、人々が一列に並び、一人目の人が次の人に何かのメッセージを伝え、それを最後の人まで伝え続けるゲーム。最後の人が受け取ったメッセージが、最初のメッセージとどれほど異なるかを確かめるというもの。このゲームから学べるのは、情報がどれだけ変わってしまうか、ということ。特にビジネスにおいては、同じ場所で伝言ゲームをするのではなく、違う場所、時間帯も別になります。言語が異なることもあるでしょう。そのため、伝わる情報の内容が変わってしまうことが普通なのです。この差を少なくすることが「チーム力」に直結していきます。苦労しているチームも多いのではないでしょうか。

伝えるのが前提

ビジネスのコミュニケーションは、伝えることが前提となっています。たとえば、企業のビジョンや目標、具体的なプロジェクトの内容など、これらは全ての関係者に正確に伝わる必要があります。しかし、簡単には伝わらないのも前提です。
・伝えることが前提
・伝わらないことが前提
と2つの前提が存在していると考えています。たとえば、「毎朝、朝礼で伝えています」と自信を持って報告しているリーダーがいました。メンバーに伝わっているかを確認すると「ほとんど、わかりません」という状態でした。伝わっていないのです。ただ、文章を読み上げただけでは響かないですし、記憶にも残らないのです。

伝えないのは言語道断

もうひとつ押さえておきたいポイントがあります。意図的に「伝えない」ことについてです。単に忘れて「伝えない」こともありますが、今回それは除きます。

「伝えない」という選択は、ビジネスの現場では大きなリスクを伴います。ある人が情報を保持し続けることで、チームや関係者間の認識のズレが生じ始めます。効率的な業務遂行が難しくなるだけでなく、失敗のリスクも高まります。そこには
・いい加減さ
・曖昧さ
・隠蔽気質(伝える情報を選んでいる、取捨選択している)
があります。

「あのことはリーダー(社長)に伝えないでほしい」とか「なぜ伝えるのですか(なぜ言うのか)」と言われたこともあります。こうやって抑えつけることで、組織内の情報操作をするのか、と感じたことは最近でもあります。ただ、時間の経過とともに情報操作はバレていきます。情報操作は、「この人にはここまで伝える」「あの人にはここまでしか伝えない」などと非常に疲れる作業です。企業の目的はひとつなのに、なぜこのような神経戦を繰り広げるのか理解に苦しむこともあります。そこには、企業の目的とは別の個人のゴールが設定されているので、そのような手の込んだことをするのでしょう。会社より個人を優先していると感じます。

コミュニケーションの質を高める

伝えることの重要性を理解した上で、次に大切なのは「どのように伝えるか」という問題です。情報の伝達を正確に、そして効果的に行うためには、以下のポイントが考えられます。

  1. 明確さ:
    伝える情報は明確であることが必要です。余計な情報を省き、ポイントを絞って伝えることで、受け手の理解を助けます。
  2. 相手の立場を理解する:
    伝える情報を理解しやすくするためには、受け手の立場や背景知識を理解することが重要です。
  3. フィードバックを求める:
    自分の伝えた情報が正しく理解されているかを確認するため、受け手からのフィードバックを求めることが必要です。

まとめ

ビジネスの現場では、伝えることの重要性が際立ってきています。情報を伝えること、そしてそれを正確に伝えることが、企業の成功を左右する要因になるのは理解できると思います。伝言ゲームのように情報が歪んで伝わることのないよう、コミュニケーションの質を高める努力が求められます。また、意図的に情報を歪ませる組織風土は最終的に大きな損失(事故)へとつながるので小さいうちに解決しておきたいところです。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆