労務費の価格転嫁

最低賃金が上がり続けてますが、今後も上昇を毎年繰り返していくと予想しています。そのため、賃上げ原資の確保が企業経営における重要な課題となっています。今回はは、政府が発表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の主要なポイントをわかりやすく解説します。政府も労務費の価格転嫁がスムーズに進まなければ賃金アップにブレーキがかかることを理解しているのだと思います。

なぜ今、労務費の価格転嫁が重要なのか

2024年の春季労使交渉では約30年ぶりの高い賃上げ率を記録しましたが、急激な物価上昇に賃金の上昇が追いついていない状況が続いています。賃金アップは年1回ですが、物価の上昇はその都度行われているので、追いついていないのを、実感している状態です。

現状の課題

公正取引委員会の特別調査によると、各種コストの転嫁率(中央値)は以下のような状況となっています。

  • 原材料価格:80.0%
  • エネルギーコスト:50.0%
  • 労務費:30.0%

特に労務費の転嫁率が低い。その要因として、以下が挙げられています。

  1. 「労務費上昇は生産性向上で吸収すべき」という根強い意識
  2. 発注者からの過度に詳細な説明・資料要求
  3. 取引関係悪化への懸念

たしかに現場においても値上げの提案に対して返答をもらえないケースもあります。担当者で止まってしまうケースもあり、上長に提案が届かず放置されるケースも見たことがあります。担当者としても稟議を上げることに抵抗があるのでしょう。そこを動かすために、このような指針が出始めていると思います。

求められる行動

発注者に求められる行動はここに書かれてあります。たとえば、このような感じです。「経営トップまで上げて決定すること」とやはり明示されています。その点は現場を理解した内容になっています。ただこのような指針がどこまで浸透するかは不明。そこが今回の課題になるのではないでしょうか。

★発注者としての行動①
①労務費の上昇分について取引価格への転嫁を受け入れる取組方針を具体的に経営トップまで上げて決定すること
②経営トップが同方針又はその要旨などを書面等の形に残る方法で社内外に示すこと
③その後の取組状況を定期的に経営トップに報告し、必要に応じ、経営トップが更なる対応方針を示すこと

まとめ

労務費の適切な価格転嫁は、どこまで騒がれるようになるのでしょうか。WEB上では指針が公開されても、浸透するかは未知数です。業界によっても差があるでしょう。顧客によっても差が出るのは普通です。依存度による力関係によっても対応に差が出るのではないでしょうか。今後も浸透状況を確認していきたい部分です。

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