先読みアドバイスは受け入れられない

先読みして支援する、アドバイスするとき、先回りし過ぎると受け入れてもらえないケースがあります。どうしてなのだろうか。考えてみたらわかったことはシンプル。目先の1手2手先しか見えていない人と5手10手先まで見える人のちがいだとわかったのです。将棋のプロの世界と同じことが起こっているのでしょう。藤井聡太棋士の強さは他のプロ棋士の2割先まで読めるのが要因といわれています。先読みの深さのちがいから生じているのです。具体的に解説します。

こんなケース

ビジネスが順調ではないケースはアドバイスしても受け入れてもらえます。現在がうまく進まず苦労しているからです。アドバイスを聞くことで、今後の失敗を事前に防ぐ可能性も感じるからです。

しかし、成功が続いている場合は反対意見のアドバイスをすると受け入れてもらえない。今のままでは2年先、3年先に心配なことが発生するかもしれないという先回りしたアドバイスは特に受け入れられません。この場合、目の前の成功を反対しているように見えるからです。成功のジャマをする人に見えてしまい、ときには排除されます。
その後は予想通り、目先の成功はしますが、その後は失敗が続き最悪なケースを迎えることもあります。成功は2年続くと自信になり、3年続くと過信し、5年続くと誰も止められません。

過去を振り返ればこんな事例があります。2001年に液晶テレビを発売したシャープ。2004年にはエポックな亀山工場を建設。亀山モデルが一世風靡しました。しかし、2016年には台湾企業の子会社になってしまったのです。絶頂期の社長記者会見を覚えていますが、自信を振りまいていました。

成長なのか膨張なのか

拡大と膨張は違うと言われますが、成長時には投資をどこまでするのか判断に悩みます。外せないのは市場動向。お客様の市場がどうなのか。もう少し大きい視点で見るならば、経済動向を見て判断すれば大きな間違いになりません。もうひとつは、勝っている場合に、勝ち要因が明確なのか、他社がマネできない内容なのかも判断基準です。こうした判断のときは当事者メンバーの意見はすべて聞くことはしません。半値くらいで聞いておくのが冷静な状態だと考えています。熱く語る人を見ると、つい職業柄なのか「成功に酔ってないか」と疑うクセがついてしまっています。それは、最悪のケースをまわりでも見てきたからです。絶頂時期を知っている会社が今は存在していないのです。

苦い経験

過去に苦い経験があります。10年ほど前だったと記憶しています。「このビジネスモデルは縮小するか、破綻していきます」とお伝えしたのですが、当時業績がよかったので聞き入れられることはありませんでした。疎遠になってしまったのです。それが最近になって「あのとき言われていたとおりになってしまいました」と言われたのです。今からでは後手の対応なので選択肢は限られます。後悔先に立たず、の結果です。

まとめ

ビジネスの成果を左右する要因については研究がなされていますが、もっとも影響があるのはビジネスモデルや戦略だと思われています。しかし、ビジネスモデル、戦略の要因は大切ですが1番の要因にはなりません。最大の要因は「タイミング」といわれています。ということは、タイミングを判断できる能力がビジネスを左右するのです。

長年取り組み続けたビジネスが成長するパターンがありますが、これは時代が追いついてきたケースもあります。先回りしてビジネス化していたが最初は市場が小さかったケースです。それが時代とともに市場が拡大したり、競合が他のところに移動して絶好のタイミングが生まれることがあるのです。

これを偶然と呼ぶのか、推測をもとにした先回りなのかはまわりはわかりません。しかし、推測をもとに先回りしていた場合は、次の推測も当てることができます。再現性が高いからです。偶然の場合は、次から打ち出すビジネスがほとんど外れてしまいます。そんな現象はまわりでも見たことがあるのではないでしょうか。ひとつの成功から複数の新規事業に手を出して失敗するケースです。金融機関の方が複数の新規事業に手を出すことについて「やめた方がいい」と言われるのは経験則からきているのでしょう。
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」だと思います。

——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆