なぜ必要なのか

企業にはなぜビジョンが必要なのでしょうか。その理由を説明するには、ルートマップという概念を用いると非常にわかりやすいと思います。まず想像してみてください。あなたが旅行者で、目的地を選び、それを目指して旅を始めるとしましょう。目的地が明確であれば、ルートを選定することが可能になります。複数あるルートの中から最適なルート、つまり最も効率的な、または景色の良い、リスクの少ないルートを選択することができます。これができるのも、明確な目的地があるからです。

しかし、目的地がはっきりしなければ、たとえ最先端のナビゲーションを装備していても、適切なルートを探し出すことはできません。結果的には迷いやすくなり、目的地に到達することは困難になるでしょう。企業の経営も同じです。

目指すべきビジョン、つまり企業の目的地が明確でなければ、適切な戦略を立て、その戦略に基づいた行動を実行することは困難です。目的地が不明確だと、それに向かって進むルートを決めることができず、組織全体が同じ方向に進むことは難しくなります。

すべての活動、選択、そして進展はビジョンがあってこそ可能になります。ビジョンは、私たちがどこへ向かっているのか、何を成し遂げたいのかを示す灯台のようなものです。

明確にする要素

ただ、ビジョンというのは、一見すると捉えどころのない、とても抽象的な概念かもしれません。何を意味しているのか、どのように捉えるべきなのか、最適な内容を考え出すことは容易ではありません。しかし、この難解な概念を具体的なものに変えていくためのプロセスは、案外、身近なところに存在します。

以下に引用する1〜3の観点は、ビジョンを形成する上で考えるべき要素です。
①「自分は何者なのか」、つまり自己認識や目的
②「自分が向かうべき先はどこか」、すなわち未来のイメージ
③ビジョンを実現するためのガイドとなる「価値観」

これらの観点は、一見するとやはり抽象的で、具体的なイメージに繋がりづらいかもしれません。特に3番目に挙げた価値観については、頭を悩ます人も多いことでしょう。価値観という言葉はよく耳にしますが、実際に自分自身の価値観を言葉にするのは簡単ではありません。

具体的には

では、具体的に考えるためにはどうすればよいのでしょうか。価値観とは、言い換えれば「自分が何を大切に思っているか」ということです。個人であれ企業であれ、何を最も大切にしているのかを箇条書きにすることで、徐々に価値観が見えてくるのです。例えば、会社の価値観を考えるとき、それは「顧客第一」であることかもしれません。それと同時に「従業員の幸せ」も大切に思うかもしれません。さらに、「社会貢献」や「地域密着」などが価値観として挙げられるかもしれません。

まとめ

これらを明文化し、ビジョンとして共有することで、組織全体の行動指針を作ることが可能になります。このように、価値観を具体化することは、ビジョンを形成するための重要な一歩となります。だからこそ、自分自身や組織全体が何を大切にしているのかを明確に理解し、それを言葉にすることが求められます。それは、自分自身や組織の進むべき道筋を明確に示すコンパスとなるはずです。

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スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ藤原毅芳執筆