講演内容より

今回は、日本銀行副総裁の氷見野良三氏による講演から、気になったところを抜粋して解説します。「金利のある世界」という演題で講演されています。先行して利上げした海外事例が印象に残っています。その内容について取り上げてみます。

海外事例

金利引き上げの先行事例として、米国の内容があがっていました。下記の内容になりますが、まとめてみます。

  • 米国企業と家計は変動金利の借入れを固定金利に借り換えした
  • 住宅ローンの95%は低利の固定金利となった
  • 社債の平均満期期間も長くなった

とあります。金利を大きく引き上げる前に「変動金利から固定金利」へ借り換えを行い、事前準備をしているのがわかります。そのため、利上げ局面においても利払いが増えなかったのです。3割くらいは利払いが減った事実があるのです。この事実はあまりメディアでは目にすることはありません。なぜなら、そこには理由があるからです。

日本より先行して金利を引き上げたアメリカの例を見てみたいと思います。IMFが7月に公表した対米審査報告書に興味深い分析がありました4。米国は2022年に金利を大きく引き上げたわけですが、その前のコロナ期に、米国の企業と家計は変動金利の借入れを固定金利に借り換え、低い借入れ金利をロックインしました。住宅ローンの95%は低利の固定金利となり、社債の平均満期期間も長くなりました。

その結果、過去の利上げ局面では企業の利払いがネットで増えたのに、今次利上げ局面ではむしろ3、4割かた減ったといいます(図表7)。また、家計も、自動車ローンやカードローンの利払いは増えたものの、全体としてみればネットの利払いの増加はわずかにとどまった、というのです。

日本の特徴

日本の住宅ローンは「変動金利」を選択している人が7割です。半数以上が変動金利型の住宅ローンなのです。米国では固定金利が主流とは聞いていました。上記の講演では「住宅ローンの95%が固定金利」となっています。まったく状況が違うことがわかります。では、なぜ変動金利が主流なのでしょうか。それは、
・ゼロ金利が20年ほど続いた
・金利上昇を想像できない
・月々の支払い金額が少ない
からです。また、住宅ローンを貸し出す金融機関にとって変動金利型だと金利上昇するときに
・収益が増える
のです。金融機関に住宅ローンを相談すると「変動型」をすすめられるようです。2年前だったと思いますが「固定金利を選ぶ人はいませんよ」といったトークもあったようです。固定金利だと、金融機関の収益は期間中一定であり、金利上昇しても収益は増えません。それより変動型の方が金利上昇が発生すれば収益増になっていきます。そのような事情があるのだと推測しています。

金利のある世界
一橋大学政策フォーラム「金利のある世界」における講演
日本銀行副総裁 氷見野 良三
2025年1月30日
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/ko250130a.htm

参考にするなら

金利引き上げの先行事例の米国では固定型金利に借り換えたことで利払いが増えず金利上昇の影響が少なかった。その事例を参考にするならば、日本も同じように金利上昇前に固定金利に借り換えしておくべきでしょう。日本の金利はそれほど上昇しない、と明言している人もいますが、あくまでも予測でしかないと感じます。金利上昇で利払いが増えてしまってから固定型に借り換えても遅いと感じます。

まとめ

金利は上昇しています。2025年は金利引き上げの年になります。様子を見て判断するのもいいとは思いますが、先行事例があるならば、それを参考にして手を打っておくべきでしょう。何事も先手で動くことです。

(下記動画は上記文章をAIで読み上げさせています。人の動きもAIが自動生成しており撮影はしておりません↓)

——————————-
スキマ時間に読めるビジネスリーダーのための『経営情報Web Magazine ファースト・ジャッジ』fjコンサルタンツ 藤原毅芳 運営 執筆